現在は予約制を導入するクリニックが増えてきました。発熱外来など特殊な外来だけ電話予約で当日受け付けているクリニックもありますが、web予約ができるクリニックも増えてきました。これは時代の流れであり、おそらくwebでの予約は主流になっていくものと思います。ところで随分先まで予約がとれるクリニックもありますが、直近の診療日の予約しかとれないクリニックもあります。今回は予約制の場合、枠をどこまで開放するかということを考えてみます。
ある程度先まで予約を開放するか、直近だけにするか
予約が取れる枠を、1ヶ月など、ある程度の範囲で開放するか、それとも直近の予約のみを受け付けるようにするかは、クリニックによってかなり違いがあります。当日朝6時から枠を開放して、争奪戦のようになる人気クリニックもありますし、けっこう先まで予約可能で、患者さんとしては予定を立てやすいように配慮しているクリニックもあります。
当院の変遷
当院は開院当初から、webで予約を受け付けていました。色々なこと、特にCOVID-19での混乱の時期などを乗り越え、現在に至るまでの流れをご紹介してみようと思います。
当初はweb予約も受け付けつつ、予約がない方も当日枠で受けていたので、枠は余裕をもたせつつ、1ヶ月先くらいまでは取れるようなシステムにしていました。とはいえ開院当初は患者さんも一日数名で、何も困ることもはありませんでした。
しかしCOVID-19の波が来た時に状況が大きく変わります。COVID-19のピーク時に、発熱外来にもかかわらず、予約が1週間先まで埋まってしまったことがありました。発熱外来の診察で1週間待ちということは普通はあり得ないことです。この当時は、COVID-19陽性の場合でも、医療機関に受診して陽性者登録が必要だった事情もあり、このようなことが起こったのだと思います。1週間経てば、患者さんの状況もかわります。予約しても来院されない方もちらほら見えました。それはそうだと思います。この時期に、直近の予約しか取れない仕様に、やむを得ず変更することにしました。
発熱外来のみ直近から予約可能な仕様にして、慢性疾患などの一般外来は先まで取れる仕様に残すことも検討しましたが、その時すでに発熱外来が予約で埋まっていると、一般外来でも構わず予約をいれる発熱の方もいたため、現実的に一般外来も残すことは不可能な状況でした。日本全体が大混乱に陥っていた時期であり、やむを得ない部分はあったと思います。
上記のような事情で、直近一日分の予約をのみ開ける形態に移行し、それが現在まで続いている状況です。予約枠は2日前ないし前日のお昼に開くような仕様になっています。
ちなみにですが、そのような形態のため、私は患者さんの次回予約を受診時にとることはありません。完全に患者さん任せにしており、慢性疾患の方でも、薬が切れる前に都合の良い日にまた来て下さいとお伝えしています。これについてはまた別記事でも考えてみようと思います。(参考記事→次回予約を診察時に取るべきか)
直近しか枠を空けない実際について
当院ではこのように直近の診療日に予約しか取れない仕様になっています。この形態にはメリット、デメリットがあります。
メリット① キャンセルは稀
患者さんも直前に予約を取るため、キャンセルはかなり珍しいです。流石に直前に予約して忘れる人は稀です。そのためキャンセルに悩むことは多くはありません。もちろんたまにはありますが。
メリット② 急な都合でも休みにしやすい
先まで予約を受けていないことで、こちらの職員の体制の事情や、私の急用・急病などで突然休みにしなくてはならなくなった場合も対応が容易です。もし先まで枠を開放していて、すでにご予約が入っていた場合、患者さんにキャンセルのご連絡をしなければなりませんが、その心配は不要です。これは結構、精神的に楽です。実際、急に休診にすることはかなり珍しいですが、それでもいつでも休めると心の何処かで思っていると、かなり精神的な負担が軽減されます。そもそも開業医のメリットの一つは自由であることです。いざとなれば好きに休めるというのは、大きなメリットであると思います。
デメリット① 機会損失
最大のデメリットは、前もって予約を取りたい患者さんにとっては面倒となるため、そのような患者さんの受診の機会損失が起きていると思います。実際、直前しかとれない体制にやむを得ず移行したことで、受診が途切れてしまった患者さんもみえます。しかしこれは、やむを得ないことなのかもしれません。何かを得ようとすれば、何かを失わざるを得ないこともあります。これは本当に悩ましいことです。
診療形態によっては先まで予約を開けることが適する場合も
当院は一般内科で比較的、発熱などの急性疾患が多いため、前もって予約を取る方が多くない現状ですので、今のところは直近の予約のみの解放でもさほど不便は感じていませんが、診療科や形態によっては先までとれた方が良いケースももちろんあると思います。たとえば小児科のワクチン接種外来ではワクチンの発注もあるでしょうから、直前の予約は現実的ではありません。精神科なども比較的予約を前もって取るケースが多いように思います。私が患者としてお世話になっている、知り合いの内視鏡に特化したクリニックもだいぶ先まで予約可能となっており、正直患者としては予定が立てやすく助かっています。
予約の形態については、先生のお考え、診療科、診療体制、ターゲット患者層、戦略によって大きく変わってくると思います。先でも少し触れましたが、先まで予約可能とすると一定の割合で当日無断キャンセルが発生し、メリットばかりではありません。これらに対しては当日受付枠も併用してカバーしたりと、他の戦術も考えていく必要があると思います。
最初から最適な形態に持っていけるのが理想ですが、開院当初は色々な形態を試してみて、模索してみるのが、現実的に良いのではないかと考えます。色々やってみると、メリット、デメリットが実感を伴って肌感覚で分かってくると思います。それらを加味して、最終的には先生の好みに落ち着くのが良いのではないと思います。商業戦略を優先させるのはもちろん大事な要素ですが、過度な無理は長続きしません。ご自身のクリニックなのですから、一番よいのは先生が無理なく続けれられる形態であると、私は思います。