開業するにあたり、多くの先生が、患者さん一人当たりの単価と、一日患者数を想定し、これにより経営の戦略を立てていくと思います。私も開業前は色々とシミュレートして考えを巡らせました。しかし実際やってみると、想定外のことだらけで、なかなか思うようにはいきません。
今回は、患者単価と一日患者数について、リアルな数字を交えながら考えて行こうと思います。

開業前のシミュレート

いろいろな本やサイトをみましたが、一般的な内科の場合、患者単価は5000円から6000円、一日患者数の目安は40人としているものを私は参考にしました。仮に患者単価を5000円、一日患者数を40人とした場合、一日の売上は20万円です。月の稼働が平均20日と仮定した場合、ひと月あたりの売上は400万円となり、年間は4800万円です。もちろんここから経費や、生活費を負担し、借入金の返済も行う必要がありますが、悪くないのではないかと思います。

ミニマム開業で上記であれば、成功の部類に入ると思いますが、重装開業の場合、経費や借金返済がかなり多いため、上記でも赤字の可能性があります。

当院の実際

しかし想定のようには行かないものです。わたしのクリニックでのある月では、患者単価は5000円ほど、一日患者数は13人でした。これはかなりピンチです。かなり焦りがあります。患者単価については、検査件数によって結構左右されますので、まあこんなものかと思いますが、患者数については想定外でした。こんなに手が空くことがあるとは、開業前は思いもしませんでした。

初診、再診の患者単価

ここで患者単価の概算について考えてみます。初診で特に検査等せずに、処方のみの場合、およそ3800円です。再診の場合は2000円ほどです。特定疾患や生活習慣病で定期通院中の患者さんの場合、診察のみでは5000円弱で、血液検査を行うと9000円ほどです。また発熱外来で、COVID-19やインフルの検査をする初診患者さんの場合は、内容によって7000-8000円ほどになります。一般的な内科では、このような層の患者さんが多いと思います。だいたい平均すると、5000円ほどになるのは、妥当かと思います。

開業前の先生としては、再診の患者さんを診察して2000円という金額に驚かれるかもしれません。ですがリアルな数字としてはこんなものです。保険診療が薄利多売と言われるのも無理はないのかもしれません。

コンサルタントのシミュレートはまず信用できない

コンサルさんに開業支援をしてもらうと、患者単価と一日患者数のシミュレーションを作ってくれます。私はコンサルさんにお願いしたわけではないので、自分の経験としては言えないのですが、多くの場合、順調に患者さんが増えていき、ある時損益分岐点を超えて、その後は順調に安定していく想定でもってくるらしいです。ですがそのように、順調に右肩上がりで上手くいくとは私には思えません。何か一つでも変数が狂えば思うように行かないのが経営です。ある時急に患者さんが増えたと思ったら、急に暇になったりと、今でも全く読めない状況です。コンサルタントとしては、開業支援をしているわけですから、上手くいく以外のシミュレーションをするわけにはいかないでしょう。このような数字は参考程度に留めておくのがよいと思います。