このサイトをご覧の先生は、開業準備をされているか、または開業初期の先生が多いのではないかと思います。他の多くのサイトと異なり、このサイトは開業を勧めるよりも、注意喚起して、慎重になることをお勧めしている変わったサイトです。(ちなみに開業をすすめるサイトは多くがコンサル絡みです、勧めないと商売になりません。)開業の面倒さや大変さを語っているものの、ではなぜ未だに開業を続けているのか、疑問に思われる先生もいらっしゃると思います。今回は、いま私が開業医を続けている理由についてお話してみようと思います。

私がいま開業医を続ける理由

この記事を書くにあたって自己分析をしてみましたが、大きく3つの理由が思い浮かびました。

1番目の理由:一番は子どもとの時間確保 

もっとも大きい理由は、小さい子どもとの時間を確保できることです。昼休みは自宅に帰って、子どもの顔を見られますし、夜も早めに仕事をひとまず切り上げて、夕食やお風呂のお世話をすることができます。これは開業医でしか得られないメリットであると思います。家族との時間を増やすために、売上が減るのを覚悟で、開業当初よりも診療時間を縮小したほどです。

勤務医であれば、どんなに職場の近くに住んでいても昼休みに家に帰るわけには行きませんし、夜もどうしても遅くなりがちです。お子さんとの時間を確保することは、なかなか難しいと思います。そもそもお子さんが生まれる年代の先生は、仕事も忙しい時期です。先生によっては、お子さんが小さい時の記憶がほとんど無いということも聞きます。なかなか家庭と仕事の両立は難しいものです。

たしかに開業医は診療時間外も事務仕事やクリニック運営の仕事など、やることも多くありますが、時間の融通が効くので、仕事を自分でコントロールしやすいというメリットがあります。一度家に帰ってから、夜にクリニックに戻って仕事をすることも可能です。私も夕方は一旦仕事を切り上げて、子どもが寝たあとに、クリニックに戻って、残りの仕事を片付けることもしばしばです。このように聞くと大変と思われることもありますが、意外に自分のペースで出来ると、あまり苦になりません。

2番目の理由:開業初期をなんとか越えたから

2番目の理由としては、もう開業してしまったから、という理由です。ある意味惰性とも言えるかもしれません。開業医で最もきついのは、私は開業初期の混乱の時期であると思います。その時期を乗り越えて、ある程度仕事の要領を掴んでくると、あとはおおむね道なりです。もちろん診療報酬改定や各種制度の変更などもありますが、変わったところだけ対応すればいいので、負担はそれなりです。たしかに面倒ではありますが、開業初期の、右も左もわからない、わからないことだらけの状況に比べればだいぶマシだと感じます。

3番目の理由:なんだかんだ、経営が好き

最後の理由としては、なんだかんだで経営者の仕事が気に入っているという点です。クリニックの経営やマイクロ法人の運営は、事務仕事や法律、税金の勉強もしなければならず、面倒に思うことも多いですが、それでも自分自身ですべて責任を持って、決めることができるというメリットもあります。これは勤務医ではなかなか経験出来なかった仕事でした。両方やってみた結果として、今のところ、私は経営の仕事が気に入っているようです。

しかし今から開業するかと言われたら、正直やらない、やれない

もしも現在勤務医で、今から新たに開業するかと言われたら、少し困ってしまいますが、今からならおそらくやらないと思います。理由は勝てる気がしないからです。開業前はわけがわからないまま、勢いでやってしまったという面がありましたが、今は怖くてできません。さらに私が開業したときよりも、開業医の状況は一層厳しくなっているように感じます。特に円安、物価高に伴うコスト増、賃金上昇にも関わらず診療報酬は減る一方です。また一時的にバブルのような状況であった、COVID-19に関する補助も終了しました。良くなる要素が見当たらない今の時点で、敢えて危険なところに飛び込むことはリスクの方が大きいと考えます。

今からなら上手に転職すると思います

私が今までの知識、経験がある状況で、開業前に戻ったとしたら、開業はしたいと思うものの、おそらく踏み切れないと思います。その場合は転職の知識を応用し、高給の非常勤を上手に組み合わせて、週4日の勤務を抑えて、家庭と両立する方法を取ります。また経営がやりたければ、クリニックではなく、開業コストの小さいマイクロ法人を作り、そこで経営者になります。プライベートカンパニーとして、一部資産を法人に移して運用し、さらに社会保険料の削減を行いつつ、設備投資が不要で低リスクな仕事(このサイトの運営のような)を行う手法を取ると思います。マイクロ法人はたとえ失敗しても、数十万円の損失に留まり、致命傷を負うことはまずありません。クリニック開業の場合は、ミニマム開業でも運転資金含めて数千万円の資金がかかるので、これは人生にかなりのダメージを与える可能性があります。

転職については、こちらの関連サイトも参考にしてください。(参考→医師転職の関連サイト

開業前なら、考え直すのも一考

私は開業を留めるのでもなく、勧める立場でもありませんが、開業前の先生には、昨今の状況を踏まえて、どうか慎重になって頂きたいです。転職を引き合いに出すのは、別に転職サイトを運営しているからではなく、現実的な選択肢であるためです。正直に言って、転職の方が低リスクで、ミドルリターン〜準ハイリターンくらいは狙えます。現在の開業は、ハイリスク〜超ハイリスクでありながら、ローリターン〜ミドルリターンくらいに思えます。ローリターンどころか借金を背負いこんで撤退ということも起こり得る時代です。現在の開業はリスクとリターンが見合っていないと感じます。

そして、先生の周りに集まってくる人々は、先生に上記のようなことは言いません。開業の良い面しか言いません。知らず知らずのうちに、開業に向けて、外堀を埋めようとしてくるでしょう。それは先生が開業してくれると儲かる人々だからです。利益構造上そのようになっています。リスクを心配してくれるのは、先生の家族や親しい友人くらいです。そして他人では私くらいでしょう笑。これは当たらずも遠からずの現実だと思います。

それでもやるならばやりましょう!

上記と矛盾しますが、先生が開業したいなら、勝てるプランがあるなら、開業しましょう!医者に限らず起業をする人は、周りの誰がなんと言おうとやるものです。やるなら徹底的に戦って勝ちましょう。でも最低限のリスク対策は取って下さい。他の記事と重複しますが、戦略、勝算なき重装開業は極めて危険です。迷うならまずは小さく始めて、徐々に大きくしましょう。小さいクリニックで始めて患者さんが溢れて手狭になれば、多少コストがかかっても、拡大は後からいくらでも、どうにでもなります。しかし大きく始めた後に、思うように患者さんが集まらなければ取り返しがつかない事態になります。当サイトでは引き続き、開業をご検討の先生に向けて、少しでも参考になる情報をアップしていきます。