当院では開院から長らく自動精算機を使用していました。しかし先日契約を終了し、”自動釣銭機”に移行することにしました。今回は当院での会計業務の変遷と、現在の考えについてご紹介してみようと思います。

開院初期の自動精算機は非常に助かった

当院は開院時から、少人数スタッフでの対応や、場合によってはワンオペレーションになることを想定して、自動精算機を導入しました。当院の中ではかなり高額の初期投資になり、大きな決断が必要でしたが、結果としてはあって良かったと思います。特に開院当初のなれない時期や、COVID-19の混乱下では、正確で素早い会計業務は、非常に助けになりました。スタッフ1人分の役割を果たしてくれたことに感謝しています。

デジスマ決済の台頭で、当院のオペレーションが大きく動く

当院はデジスマ+デジカルの電子カルテ構成ですが、デジスマ決済を選択する患者さんが徐々に増えていくことで、当院の会計業務が大きく変化することになります。デジスマ決済は事前にクレジットカードの登録が必要で、当初は登録のUIがやや煩雑だったこともあり、利用される患者さんは非常に少ない状況でした。しかしCOVID-19における世間の影響もあってか、キャッシュレスが日本でも急速に普及するにつれて、徐々にデジスマ決済を選択する患者さんが増えてきました。

デジスマ決済は、電子カルテの操作で会計ボタンを押して確定すると、自己負担分が、登録したクレジットカードから自動的に引き落とされる仕組みです。会計の確定とともに、患者さんに、領収書と診療明細書が、PDFで自動的に送信されます。患者さんにとっても、待ち時間が大幅に短縮されるため、非常に好評です。事実、一度デジスマ決済を経験した患者さんが通常の決済に戻ることは、ほとんどありません。

徐々に自動精算機の割合が減少

上記のようにデジスマ決済の割合が多くなるにつれて、自動精算機が使用される頻度は減っていきました。また小児医療の公費拡大も影響し、自動精算機をほとんど使わない日すら出てくるようになりました。ここまで状況が変わってくると、そろそろ見直しの時期かなと考えるようになりました。

自動精算機のコストは大きい

自動精算機は初期費用も、月額費用もかなり大きいです。当院ではテマサックproという機種を使用していますが、初期費用では400万円弱かかりましたし、ランニングコストも年間40万円弱発生します。それでも毎日フル稼働で働いてくれるならば、事務スタッフさん一人分の働きをしてくれるのでまだいいですが、たまにしか使わない状態ではかなり重い負担です。例えるなら患者さんが全然来ない日に、スタッフがもう一人いるような感覚です。

一人あたりのコストを考慮すると

キャッシュレスの手数料は、クレジットカードは1.6%ほど、JCB系や交通系、QRコードがやや高めで、3-4%弱ほどですが、自動精算機のランニングコストを考慮すると、また見方が変わってきます。例えばランニングコストが年間40万円で、年間診療日数が200日とすると、1日あたり2000円のランニングコストが発生します。これは再診患者さん1人分の診療報酬に匹敵します。つまり自動精算機を維持するためには再診患者さんを1人診察する必要があるわけです。

また自動精算機を使用する人数が例えば1日10人とすれば、一人あたり200円かかります。2000円の診療報酬に対して、200円の手数料がかかる場合、なんと手数料率は驚異の10%!です。もちろんこれにキャッシュレス手数料も上乗せされます。これが1日5人に減れば、一人あたり400円になるので、さらに負担は増えることになります。このように考えるとかなり大きな負担を感じます。

当院では自動精算機を全く使用しない日すら存在します。そうなるとただ固定費がかかるだけになってしまうので本当に負担です。

自動精算機のメリット

私はテマサックproしか使用したことがないので、こちら限定になりますが、メリットをあげてみます。

初めてでもすぐ使える

特に患者さん側のUIは非常に使いやすいので、初めての患者さんもほぼ迷わず使用できます。これは非常に大きなメリットだと思います。最近はスーパーでもセルフ精算が普及しているので、ほぼ同じ感覚で使用できます。

現金管理がラク

当然ですが、現金の計算間違えなどもありません。現金の残額もリアルタイムで把握できるので非常にラクです。

日計の計算も一瞬

会計締めをして、その日の日計を印刷すれば、あとは日報を会計ソフトに打ち込むだけです。下記のデメリットはありますが、まあラクな部類にはなると思います。

自動精算機のデメリット

テマサックproは自動精算機としては、かなり使いやすいものですが、敢えてデメリットもあげてみます。

振り込み時期がキャッシュレスの種類によりばらばら 

これは会計をご自身でやらない先生には関係がないことですが、クレジットカード、電子マネー、QRコード決済で、それぞれ振り込み時期がバラバラなので、仕分けの際に手間が増えます。できれば、キャッシュレスは一括で振込だと処理がラクでした。また振込がバラバラなので、日々の帳簿でもキャッシュレスの種類により、補助科目で分ける必要があり、それも若干面倒でした。

振込手数料がかかる

これも細かいことですが、当院のキャッシュレス端末では、電子マネー、QRコード決済については、振込手数料がかかりました。昨今では、Squareなどの他社のサービスでも振込手数料はフリーになってきているのに比べ、若干遅れがあったと思います。

回線やPCトラブルには弱い

自動精算機は電子カルテとオンライン連携をする場合、通信回線がダウンすると、自動精算機も共倒れになります。また電子カルテと連携しているPCを一つ決めて、そこにPOSシステムを入れて運用しますが、万が一、そのPCの調子が悪くなると、自動精算機も通常通り使えなくなります。

これは結構見落としがちなデメリットであると思います。平時は特に問題ないですが、windowsアップデート後など、何かが変わったときに、急に使えなくなるリスクがあります。POSはもう一台無料で他のPCにもインストールすることができましたが、オンライン連携ができるのは当時一台だけでした。(その後はわかりません。)

自動精算機そのものに加え、自動精算機と連携するPC、回線環境、いずれかが一つでもトラブルが起きると、もうお手上げです。しかもこの手のトラブルは事前に予測もできず、起きてしまうと運用効率がガタ落ちになるので、非常にストレスが大きいです。

私も連携PCのトラブルや、回線トラブルなど、色々な原因で自動精算機が使えなくなることがありました。また困ったことに、特にオンライン連携する、メインのPCが使えなくなると、バックアップで運用する手段が非常に限られます。なれない手入力でかろうじで運用するなど、本当に面倒なことになります。こういう時はスタンドアロンの自動釣銭機の方が強いと思います。

やはりコストが重い

最大のデメリットはランニングコストです。なんだかんだで年間40万円弱かかるコストは、ミニマム開業のクリニックにはやはり重いです。

しかしなんだかんだ言っても、事務スタッフ1人分くらいの働きをしてくれるのは間違いないので、もしデジスマ決済がなければ、またここまで普及しなければ、私も自動精算機を使い続けていたと思います。

自動釣銭機→自動釣銭機への移行

当院では以上のように、自動精算機の契約を終了しました。その後、”自動釣銭機”に移行しますのです。当院で新たに導入にした自動釣銭機は、初期費用のみで、ランニングコストはフリーです。スタンドアロンタイプでネット回線がなくても使えます。PCは壊れても、買い直して再インストールすれば使えるそうで、極論すれば釣り銭機が壊れるまでランニングコストフリーで使えるそうです。

初期費用も、IT導入補助金を使用して、100万円ほどで導入できました。これなら2年半使えば、自動精算機のランニングコストと同等になります。たしかにオンライン連携はできない等のデメリットもありますが、キャッシュレスの手数料も、東京医師歯科医師協同組合を経由することで大幅に下がったので、コストカットとしては有効かと思います。こちらはまた使ってみてから記事にまとめようと思います。