保険医協会について

以前の記事でも書きましたが、保険医協会は開業医にとってとても心強い存在だと思います。
特に独立当初はわからないことが多く、気軽に相談できる窓口があるのは心強いものです。保険診療やレセプトのことはもちろん、税務、労務、人の採用、さらには法律相談にまで幅広く対応してくれるので、入会して損はないと感じていました。

月額の会費は都道府県によって異なるようですが、私の地域では6,000円でした。正直この金額であれだけのサポートを受けられるなら、コストパフォーマンスはかなり良いといえます。
また、開業して1年前後で行われる「新規個別指導」に備える意味でも、協会の支援は非常に有益です。大事故を防ぐという意味では、ぜひ入っておいた方が良いと今でも思っています。

当院での経過

私自身も開業してしばらくしてから協会の存在を知って入会しました。
それからしばらくの間、新規個別指導対策などでお世話になり、本当に助けられました。ところが最近、いろいろな事情が重なり、ついに退会せざるを得ない状況になってしまいました。

コストの上昇という現実

最大の理由はやはり「コスト」です。
月額6,000円という額は決して大きな負担ではないように見えますが、クリニック運営全体で考えると、ここ数年のコスト上昇は本当に厳しいものがあります。

検査の外注費用、備品の値上がり、電気代をはじめとする光熱費……細かいものまで含めると、経営を圧迫する要素はどんどん増えてきています。またもちろん私個人の生活コストも、ここ最近の物価高騰の影響で増えてしまっています。診療所の経営において「売上を増やす」ことはそう簡単ではなく、診療時間を増やせば人件費や自分自身の消耗も増えるのでなかなか難しい側面もあります。私としては、結局「コストを削る」しか方法がありませんでした。

今年に入ってからは、いわば「聖域なきコストカット」を自分に課しました。保険医協会は最後の最後まで残していたのですが、最終的にそこにも手をつけざるを得なかった、というのが正直なところです。

あまり使わなくなっていたことも理由に

経営が軌道に乗ると、日々新しい課題というのは減ってきます。
もちろん診療報酬改定のたびに協会の情報は非常に重要ですが、普段は利用しない月も増えてきました。「月6,000円を払い続けることが必須か?」と自分に問い直したとき、苦渋の決断ながら「削っても死にはしない」と判断しました。

継続か否か

もし経営に余裕があれば、私は今も続けていたと思います。サービスに不満があったわけでは全くありません。対応もいつも親切で、勉強会も役立つものでした。ですので、これから開業される先生には保険医協会はやはりおすすめできます。

ただ、私のようにミニマムな経営をしていて、コストカットを迫られた場合には、削る選択肢も現実的だと思います。協会を退会しても、診療ができなくなるわけではありませんから。

保険関連の注意点

注意が必要なのは「協会を経由して加入できる保険」があるという点です。
診療が止まったときの休業補償保険や、生命保険、年金関連の保険などは、協会に入っていないと加入できません。これらを利用している先生は、中途解約となるので、退会がより難しくなると思います。

一方で、関東圏にお住まいなら「東京医師歯科医師協同組合」の方がコスト面では優れています。入会金は5,000円だけで、ランニングコストはかかりません。火災保険や各種保険も充実しており、私もこちらを利用しています。民間より安い場合や待遇も良い場合もあります。保険に入る際は、医師協経由の方が、先々に万が一のことがあっても問題ないので、オススメです。

事情があれば再入会は可能

退会にあたり、協会の担当の方に率直に相談しました。
「どうしてもコストカットを迫られ、保険医協会の会費も削らざるを得ない状況になってしまいました。別に不満があるわけではなく、本当は続けたいのですが、今の経営状況では難しい。将来的に経済的に余裕ができたら、また入会したいと思っているのですが、その場合は再入会を認めてもらえるのでしょうか」

このように尋ねたところ、「事情があってやむを得ず退会する場合は、再入会は可能です」と答えていただきました。入会金は再度必要になるとのことですが、特にトラブルを起こして辞めたわけでなければ問題ないそうです。

一点注意点として、保険医協会の研修会(診療報酬改定に関する勉強会など)は、会員でないと参加できません。中には「研修だけ出てすぐ退会する」といったケースもあるそうで、それは認められていないとのことでした。私はそういった利用の仕方をしたわけではないので、再入会についても特に問題ないと説明を受けました。

フラットな立場で

私は今回、やむを得ず保険医協会を退会しました。しかしフラットな立場で申し上げれば、保険医協会は開業医にとって大きな助けになる組織だと思います。特に開業初期には強い味方になりますし、その後も改訂や各種相談で支えになってくれます。また協会自体は、各種企業との癒着もなく、独立性を持って運営されており、信頼できる存在だと私は思います

私の場合は「小規模経営でコストを削る必要があった」ための苦渋の決断でした。ですが、資金的に余裕のある先生には継続をおすすめします。逆にどうしても厳しいときは「削る選択」も現実的であると思います。