開業医の先生は、経理の業務をご自身で行うことはなく、税理士に依頼することがほとんどだと思います。実際私も税理士の先生にお願いしてチェックしてもらっています。しかし日々の診療の記帳や、仕入れ、各種支払い、振込などに関する記帳業務を含めて全て私が行っています。当院の経理業務の実際について、変遷を含めてご紹介してみようと思います。
最初は全て自力で行うつもりだったが、、
私は当初、税理士の先生にお願いするつもりはなく、確定申告まで自力で行う予定でした。当然経理の経験はないので、ひとまず日商簿記3級を取得しました。入門向けの本を何冊か買い、あとは、ふくしままさゆき先生のYouTubeで勉強しました。このレベルの授業が無料で受けられる現代はすごいと思います。
そして、会計ソフトはマネーフォワードを導入し、ネットで調べながら、ひとまず実践でやってみました。最初は手探りでしたが、個人クリニックで使う項目は非常に限られています。また今はネットで調べれば、ほとんどの情報が手に入ります。もちろん完璧ではないものの、ある程度の形にはなっていたと思います。
正直に言えば、クリニックだけであれば、私は自力で行うつもりでした。しかしクリニック開業と同時に、マイクロ法人も開業したので、こちらが大変でした。法人税の申告は素人にはなかなか大変です。しかもCOVID-19の流行で、クリニックの本業が多忙と混乱を極めておりましたので、時間的に調べながら自力で行うことが困難になってきました。パンクしそうになったところで、これでは本来の業務に差し支えると思い、初年度だけでも税理士に依頼をすることにしました。
私が依頼したのは、マイクロ法人に理解がある、リベ大税理士法人にお願いしました。そもそもマイクロ法人の知識を仕入れたのはリベ大で、タイミングが良いことに、リベ大が税理士業務を開始したので、渡りに船のような状況でした。
税理士に依頼しているが、日々の記帳は自力で
税理士さんには、各種届出などの代行、決算や確定申告などをメインに行って頂き、普段の記帳は全て自分で行うスタンスです。もちろん仕訳が分からないときはチャットで質問すると教えてもらえます。日々の診療報酬の記帳はマネーフォワードの仕訳辞書を使って、あとは自動精算機と電子カルテの日報を入力するだけなので、全く難しくありません。また仕入れも、Amazonやクレジットカード、銀行口座も全てマネーフォワードに紐づけると、ほぼ自動でできるようになります。最初に設定してしまえば、あとはほぼ何も考えなくてもできるようになります。
マネーフォワードの証憑自動登録はすごい
マネーフォワードはAmazonと紐づけることができますが、Amazonの場合は、領収書まで勝手に取得して登録してくれるので、非常に便利です。便利すぎて仕事に関するものは、Amazonでしか買いたくなくなるという副作用が生じるほどです。ITの発達により、一昔前までは考えられないほどに、便利な世の中になっています。
みなし経費の規模であれば、大間違いのリスクは少ない
保険診療収入が年間5000万円以下かつ総収入が7000万円以下のいわゆる、措置法第26条が適用できるクリニックの規模であれば、みなし経費が使えます。実際の経費より、みなし経費の方が大きい場合はその分節税できるわけです。(参考記事→措置法第26条の利用)。
こちらが使える場合も、経費など日々の記帳は重要ですが、そこまで神経質にならなくても良いのではないかと思います。売上を低く申告するのはもちろんNGですが、保険診療の場合、国が数字を把握しているので、基本的に誤魔化しようがありません。また経費についても、みなし経費の方が大きくなる場合は、経費になるかどうかの判定や、個人との按分などに神経質になる必要がありません。税務署も指摘しようがないので、相手にしないわけです。
ミニマム開業であれば、自力でも行えるかと
現代はマネーフォワードのような、便利な会計ソフトもありますし、ネットで調べれば何でも出てきます。簿記3級は1ヶ月くらい集中すれば、比較的簡単に取得できますし、一度基礎ができれば、あとは実践でなんとかなります。どうしても難しければ税理士さんに途中からお願いしてもいいわけですし、確定申告のときだけ依頼する手もあります。ミニマム開業で、なるべくコストをかけたくない先生には、自力で行うのも、現実的な環境が整ってきています。
また地域の全国青色申告会総連合に入会したり、保険医協会にも税理士の顧問の先生がいるので、そちらに質問することも可能です。平日昼間の時間を確保するのがやや大変かもしれませんが、税務署など、行政に直接聞きに行くこともできます。いくらでも窓口はあるわけです。
帳簿をご自身でつけると、経営がみえる
医者は診療に集中して、他の業務は専門家にお願いした方が、本来は良いのかもしれませんが、規模が小さい経営であれば、ご自身で記帳して、日々の経理を行うことはオススメです。キャッシュフローもリアルタイムで把握できますし、何にどれくらいお金がかかっているのか、どれくらい収入があるのかを把握することは、経営者としては重要だと思います。もちろん経営が軌道に乗って、措置法第26条の範囲を超えたり、医療法人化する場合は流石に権限委譲する時期だと思いますが、それでも経理業務の経験は無駄にはならないと思いますので、私としては、一度は先生ご自身でやって頂くのをおすすめします。
社労士業務と税理士業務の区別が最初はよくわからない
ちなみにですが、税理士の業務と、社労士の業務の違いが、素人には最初よくわかりません。税理士さんに社労士の範疇のことを聞いて、それは分からないと言われたこともありました。これは慣れていくしかないと思います。ちなみに私は、社労士さんにまでは、お願いする余裕がないので、法人の健康保険、厚生年金の業務や、クリニックのパートさんに関する届け出などは全て自力で行っています。