今回は開業医における、カルテ記載のポイントというテーマで考えて行こうと思います。開業するような、臨床経験がおありの先生に、いまさらカルテ記載のことなど、という感じですが、開業医ではカルテ記載が勤務医の時よりも厳密に求められるようになります。
今回は一般的なカルテ記載について、開業医特有のポイントについてみていきます。管理料のカルテ記載はこちらをご参照ください。(参考記事→カルテ記載のポイント 管理料編)
外来管理加算は丁寧な問診・診察の記載が必要
再診患者さんには、外来管理加算を算定することが多いと思いますが、こちらは、丁寧な問診・診察、それに伴うカルテ記載が必要になります。聴診、触診などの身体診察を行った場合は必ず記載しましょう。以下に外来管理加算に関する要件の一部を抜粋して引用します。
イ 外来管理加算を算定するに当たっては、 医師は丁寧な問診と詳細な身体診察(視診、 聴診、 打診及び触診等)を行い、 それらの結果を踏まえて、 患者に対して症状の再確認 を行いつつ、 病状や療養上の注意点等を懇切丁寧に説明するとともに、 患者の療養上の 疑問や不安を解消するため次の取組を行う。
[提供される診療内容の事例]
1 問診し、 患者の訴えを総括する。
「今日伺ったお話では、 『前回処方した薬を飲んで、 熱は下がったけれど、 咳が続き、 痰の切れが悪い。 』ということですね。 」
2 身体診察によって得られた所見及びその所見に基づく医学的判断等の説明を行う。 「診察した結果、 頸のリンパ節やのどの腫れは良くなっていますし、 胸の音 も問題ありません。 前回に比べて、 ずいぶん良くなっていますね。 」
3 これまでの治療経過を踏まえた、 療養上の注意等の説明・指導を行う。 「先日の発熱と咳や痰は、 ウイルスによる風邪の症状だと考えられますが、 ○○さんはタバコを吸っているために、 のどの粘膜が過敏で、 ちょっとした刺 激で咳が出やすく、 痰がなかなか切れなくなっているようです。 症状が落ち着 くまで、 しばらくの間はタバコを控えて、 部屋を十分に加湿し、 外出するとき にはマスクをした方が良いですよ。 」
4患者の潜在的な疑問や不安等を汲み取る取組を行う。
「他に分からないことや、 気になること、 ご心配なことはありませんか。」
ウ 診察に当たっては、 イに規定する項目のうち、 患者の状態等から必要と思われるもの を行うこととし、 必ずしも全ての項目を満たす必要はない。 また、 患者からの聴取事項 や診察所見の要点を診療録に記載する。
上記のように、必ずしも触れるものだけでなく、視診も重要な診察です。視診は見落としがちですので、かならず記載をするようにして下さい。高齢の方では、会話で意思疎通が可能か?、歩行がスムーズか?、杖を用いているか?、なども立派な診察内容になります。
診察内容が書きにくい症例では?
花粉症で、毎回同じ内容を処方をするような場合、身体診察の項目が書きにくいケースもあると思います。花粉症なのに、毎回胸部の聴診をするのは、患者さんに不審と思われるケースもあるでしょう。同性ならまだいいですが、昨今の社会情勢では、必要のない診察は、逆に問題になるケースもあります。
そのようなケースでは、私は視診の項目を重要視するようにしています。
具体的には、花粉症の患者さんで、他の併存症がない場合は、
・眼球結膜 充血なし
・はなすすりなし
・診察時咳嗽なし
・会話歩行正常
・顔色良好
のような項目を入れて、診察と記載を充実させることで対策を行っています。
花粉症のように、O) の部分が書きにくい症例でも、記載をしなければ、外来管理加算は算定できないものと考えられます。かならず何かをひねり出してでも、記載する必要があります。
処方を行った項目は、どんなに小さいことも個別に記載する
かかりつけの患者さんで、例えば高血圧症で通院されている患者さんが、たまたま腰を痛めたなどで、湿布を処方することもあると思います。このようなケースでは、薬だけ処方して、カルテ記載を忘れてしまいがちです。しかしこのような細かいことでもかならず記載しておくことをおすすめします。
具体的には、
#腰痛症
腰痛あり、対症療法にて経過をみる。
ロキソニンテープ100mg
処方。
改善しなければ、整形外科受診をすすめた。
という程度のカルテでも、全く記載が無いのとは、違いがでます。
もし面倒であれば、電子カルテのセット機能で、ロキソニンテープ100mgと引用すると同時に、上記内容のカルテ記載、ならびに病名登録も組んでおくことがおすすめです。それなら数秒で記載できます。
検査の根拠も記載
COVID-19抗原検査や、血液検査をした場合も、かならず根拠を記載するようにしています。
COVID-19の場合は、
「発熱、感冒症状がでておりCOVID-19が疑わしい状況。抗原検査の適応と判断。COVID-19抗原検査を行う。」のような記載を必ず行うようにしています。もちろん毎回記載するのは手間なので、COVID-19の検査をセット引用すると、自動的に上記カルテ記載もするようにしています。なので実際はワンクリックです。もちろん「#COVID-19疑い」の病名も自動的に入ります。
血液検査では、例えば脂質異常症でスタチンを処方している患者さんに対して、血算、生化の一般的な定期検査であれば、そこまで神経質にならなくてもよいと思いますが、たとえば臨時で、糖尿病や甲状腺、リウマチ因子などを追加する場合は、疑い病名とともに、かならず根拠をカルテ記載します。
また初診の患者さんで、体重減少など、鑑別のためにひとまず一般採血が必要な場合などは、かならず検査根拠の記載が必要です。
具体的には、「肝機能、腎機能、DM含め、体重減少の原因となりうる、スクリーニング検査を行う。」などです。これは実際に新規個別指導で選ばれたカルテですが、上記の記載で問題なく乗り切れました。書いてなければ、まずアウトだったでしょう。