今回は初診の取り扱いに関する記事です。初めて来院される患者さんや、来院歴はあるものの年単位で来院がなかった患者さんについて、初診を算定することは特に迷いませんが、薬が切れてから微妙に期間が空いてしまった場合や、月初めにかぜで受診して、一度治癒にしたけれども、月末にまた再度熱が出て受診した場合など、やや判断に迷うケースもあります。今回はどのようなケースで初診扱いにできるかを考えていこうと思います。

一度「治癒」とした急性疾患については、同月内でも初診にできる。

たとえば、月初めの10/1に急性上気道炎で来院し、薬を7日分処方して、2週間後の10/15治癒としていたとします。そのような患者さんが、10/28に、前回の症状は一度完全に軽快した後に、再度発熱で来院された場合、同じ月内でも、2回初診を算定することは有り得るのでしょうか?

結論としては、このケースでは初診を算定して問題ないと考えられます。月初めに来院された来院された急性疾患は、一度完全に寛解しており、一度完結しています。月の終わりに見えた症状は前回の疾患とは全く別個のものと考えられるため、初診として扱うことが妥当であると考えられます。

上記のケースでもし何らかの症状が継続していたら?

上記のケースでもし何らかの症状が続いていた場合は、結構微妙な判断になると思います。10/1に受診し、薬を7日分処方すると、10/8には内服が切れていることになりますが、咳が微妙に残ったまま、我慢してしまい、再度10/28に発熱がぶり返して、受診したとします。厳密なことを言えば再診扱いにした方が無難なように思いますが、初診にしても、必ずしも間違いではない気もします。ここらへんは、臨床的に個別の判断をしても許容されると思います。

抗アレルギー剤を処方した場合は、注意が必要

急性上気道炎では、抗アレルギー薬も併せて処方するケースもあると思います。医学的には妥当なケースも十分あると思いますが、その場合、保険診療のルール上、病名によっては注意が必要です。もし病名をアレルギー性鼻炎として、処方した場合は、上記のように2週間後に治癒とするのは流石に無理があります。この場合では、月末に見えた場合でも、再診とするのが妥当でしょう。

もし急性上気道炎に、急性蕁麻疹を合併しており、それに対する抗アレルギー薬の処方であれば、2週間後に治癒としても妥当です。その場合が、月末に受診しても、初診扱いとすることが妥当と考えられます。

しかしレセプト対策という理由で、急性上気道炎に対して、一律、蕁麻疹や皮膚そう痒症などを併せてつけたうえで、抗アレルギー薬を処方すると、おそらく査定されます。実際かぜを引いたことがきっかけで、蕁麻疹や、ウイルス性の中毒疹がみられることはあるので、本当に真実に基づいた病名であればもちろん問題ありませんが、保険病名として全例に露骨に行うとバレる可能性が高いです。その場合、抗アレルギー薬は処方しないで、他の内服薬で対処する方が保険診療のルール上、妥当であると思いますし、先生のストレスも減ると思います。

私も勤務医時代は、いわゆるかぜ症候群に対して、あまり深く考えずに抗アレルギー薬を処方していたこともありましたが、開業医になってからは基本的に止めました。毎年花粉症で通院されているなど、明らかに医学的にみて妥当な場合を除き、基本的には他の対症療法薬で対応しています。

慢性疾患をいつ初診扱いにするか?

アレルギー性鼻炎や、アトピー性皮膚炎、高血圧症など、これらは病名で基本的に「治癒」とするケースはかなり稀であると思います。アレルギー疾患などの慢性疾患が、そう簡単に治癒するとは考えられないためです。

しかし極端な話、3年前に一度花粉症で受診された患者さんが、3年ぶりに来院された場合、それでも再診としなければならないのでしょうか?流石にそれは違和感があります。これらの疑問には一つの基準となる答えが、『医科診療報酬点数表に関する事項』に存在します。(参考記事→「医科診療報酬点数表」、「医科診療報酬点数表に関する事項」について

ここでその部分を引用してみます。

(14) 患者が任意に診療を中止し、 1月以上経過した後、 再び同一の保険医療機関において診療を受ける場合には、その診療が同一病名又は同一症状によるものであっても、 その際の診療は、 初診として取り扱う。 なお、 この場合において、 1月の期間の計算は、例えば、2月 10 日〜3月9日、9月 15 日〜10 月14 日等と計算する。

(15) (14)にかかわらず、 慢性疾患等明らかに同一の疾病又は負傷であると推定される場合の診療は、初診として取り扱わない。

『医科診療報酬点数表に関する事項』より引用

これによれば、内服薬が完全に切れてから1ヶ月以上経過して受診した場合、同じ病名でも初診として扱えるケースが考えられます。しかしその下にある「慢性疾患等明らかに同一の疾病の場合、、」という文章の解釈が曲者です。これは臨床的に、ケース・バイ・ケースで解釈をするしかないのではないかと思います。

たとえば高血圧症で通院中の患者さんが10/1に受診し、30日分処方したとします。そしてこの場合は11/1から内服が切れます。なんらかの理由で受診が遅れてしまい、12/5に受診されたとします。

このケースでは流石に初診扱いにするというのは、無理があるように思われ、再診の扱いにするほうが妥当です。高血圧症の場合は、管理料で再診の方が点数が高いので迷わないとは思いますが、これが高尿酸血症などの管理料が算定できない場合は、やや心が揺れることになります。しかしこの場合は再診が妥当と思います。

例えば上のケースで、再診されたのが、翌年の12/5だとすれば、流石に一度受診が途切れてから1年以上経過しており、この場合では初診としても許容されるように思います。もちろん再診にしていけない理由もないので、高血圧症など管理料が算定できる場合は再診で、高尿酸血症など、初診扱いにした方が点数がよい場合は、初診で対応して問題ないと考えます。

実際のところ

ではどのくらい開けば、アレルギー性鼻炎や高尿酸血症などの病名を、一度「中止」にしてリセットするかというと、ケースにもよりますが、私の場合は、3ヶ月以上来院がなく、かつ内服が切れて1ヶ月以上経過しているケースでは、初診扱いとする場合があります。上記の場合でも、医学的に再診とするほうが、保険診療のルール上妥当と思われる場合は、再診としています。このルールに則れば、毎年の花粉症のみに受診される患者さんや、客観的にみて明らかに一度通院が途切れてしまった患者さんなどは、初診として対応しています。