先生が開業される場合は、ほとんどの場合お金を借りて開業資金を確保すると思います。ミニマム開業であっても、自己資金のみで開業できる先生はかなり稀であると思います。もちろん私も借金をして開業しました。
私が利用したのは、公的な機関である、日本政策金融公庫です。今回は開業資金をどのように確保するかということについて考えていきます。
公的機関は借りやすく、利率も低め
日本政策金融公庫は公的な機関なので、比較的審査も通りやすく、利率も抑えられます。先生が開業資金を確保するとしたら、第一選択になると思います。借入金の種類は色々ありますが、どれを使えばよいかは問い合わせると教えてくれます。多くの場合、創業融資の関連になると思います。
もしコンサルさんが入る場合は、借り入れに必要な書類も、概ね用意してくれますが、私は自力で用意せざるをえませんでした。初めてのことなので、さっぱり分からずかなり苦労しましたが、freeeなど無料で使えるサービスも利用させてもらい、なんとか審査は通りました。書類の業務が結構大変です。必要書類には開業後の資金計画のような資料もあり、今考えると素人感丸出しの資料でしたが、そこは何故か突っ込まれませんでした。
審査までは1ヶ月くらいだったと思いますが、日本政策金融公庫は急に現金が必要なケースには向きません。そのため、ある程度余裕をもって申し込んでおく必要があります。また自己資金は10%が最低となっていましたが、それでは結構厳し目です。担当の方にもよりますが、20%は必要かと思います。つまり自己資金の5倍が借りられる目安です。それ以上は他から借りる必要があり、主に信用金庫などを頼ることになります。
ちなみに、メガバンクはおそらく門前払い、地銀は相談に行っても相手にしてもらえない可能性があります。開業で頼ることになる銀行は、地方の信用金庫です。そもそも信用金庫が個人事業主など小規模な形態の事業向けとしての銀行だからです。メガバンクは大企業向け、地銀もある程度の規模の事業でないと、正直厳しいと思います。
借りる前は、医療機関であれば、他の業種よりもお金が借りやすいかと、少し甘く見ていた面がありましたが、実際はそこまで甘くなく、他の事業よりも若干信用が高いくらいであるように思います。医療機関の経営が以前より厳しくなっている影響もあると思います。また私が個人で動いた影響もあるかもしれません。メリット、デメリットありますが、資金確保が得意なやり手のコンサルさんに頼めば、もっとスムーズに行く可能性があるかと思います。その場合はどうしても設備投資が多くなりがちなので、その点に注意が必要ではありますが。
家族からも借りた。
私は一部家族からも借入を行いました。もちろんきちんと契約書、返済計画書を作成し、遅滞なく毎月返済を行っています。家族からの場合は融通がきく場合もあると思いますが、公的機関から借りるときと同様に、契約書は厳格に作成した方がよいと思います。
借入金は無理ない範囲で
開業に関する借入金に対してはいくつか考え方があるかと思いますが、私としては無理のない範囲に留めるほうがよいと思います。開業後に返済するのは先生です。経営がうまくいくか、いかないかにかかわらず、毎月返済しなければなりません。当然ですが本当に大変です。
特に借りられるだけ借りて、設備投資に多額の資金をかけるようなことは、私はやめておいたほうが良いと思います。当たれば大きいかもしれませんが、非常にリスクが大きいです。私としては設備はほどほどにしておいて、上手く行ったら買い足していくスタイルのほうが安全だと思います。
また開業には、設備投資だけでなく運転資金も必要です。開院した当初は、先がなかなか読めません。先生の生活費も必要です。不測の事態に備えて、ある程度手元に現金を残しておく必要があります。それもギリギリの資金ではく、ある程度の余裕が必要です。現金がショートしてしまうと大変なことになりますし、預金残高が減っていくと、精神的にかなり追い詰められます。貧すれば鈍するとは、紛れもない真実で、お金がなくなると冷静な判断が本当にできなくなります。
運転資金にはかならず余裕が必要です。設備のためでなく、運転資金確保のために多めにお金を借りておくというのは、一つの考え方で、ありだと思います。使わなければ時期を見て繰り上げ返済をすればいいだけです。一方で少なめギリギリに借りておいて、運転資金がショートしそうになって、融資を頼みに行っても、金融機関はまず貸してくれない可能性が高いです。残酷な話ですが、追い詰められた経営者にお金を貸してくれる人は世の中にはいないのです。たとえ患者さんが増えていて、順調にいく見込みでもです。その場合最悪黒字倒産ということになりかねません。