開業医になると、病名一つにも気を遣うようになります。病院の場合はレセプト事務さんもサポートや代行してくれますし、返戻となっても自分が痛むことはありませんが、開業すると最悪持ち出しとなってしまうので、経営的にも重要です。今回は病名付け、整理のポイントについて考えていきます。

急性病名はその都度転機をつける

急性上気道炎や急性胃炎など、比較的多い急性病名は、その都度こまめに転機を記載することをおすすめします。厳密には再診時に治癒を確認してから、治癒と転機をつけるのが理想ですが、実務上は、初診で終了となるケースも少なく有りません。

私は急性病名は、基本的にその都度転機を付けています。処方日数にもよりますが、急性上気道炎であれば初診日にひとまず2週間後に治癒としておき、その後再診があり、内服を調整した場合はその都度調整するようにしています。そのようにすると、次回来院があった場合に、前回の急性病名が残ってしまうことがなくなります。

定期通院の方も注意

注意が必要なのが、定期通院の患者さんで、急性病名をつけた場合です。いつも血圧で通っている患者さんに風邪薬を出すこともあると思いますが、その際に急性病名がずっと続いてしまうと良くありません。例えば何ヶ月も前の急性上気道炎に対して、カルボシステインを処方していると、さすがに査定される可能性があります。しかも電子カルテの病名アラートも、過去病名があると引っかからず、気が付かない場合が多いです。面倒ですが、病名はその都度整理していくことがオススメです。

レセスタを使うと急性病名の継続も拾える

私は以前「レセスタ」というレセプトチェックソフトを使用していましたが、こちらでは急性病名の継続もチェックできたので便利でした。当院の規模だと、どうしてもコストが気になるため、やむなく1年で辞めましたが、ソフト自体はオススメできるものでした。特に開院当初はわからないことや、見落としも多いので、あった方が良いと思います。蛇足ですが営業担当の方も丁寧な方で好感が持てました。
(※ちなみに当サイトはレセスタと利益相反はありません。)

病名は多くとも10個ほどに留めたい

レセプト請求する際に、あまりに病名が多いと見栄えがよくありません。高齢者の方で複数の疾患が混在する場合はやむを得ませんが、極力病名は10個以内に押さえて、アクティブでないものは、治癒や終了として整理した方が良いです。

アレルギー疾患やアトピー性皮膚炎などは注意

基本的にアレルギー疾患やアトピー、喘息などは、治癒の転機にすることは稀だと思います。しばらく来院がない場合などは、基本的に「終了」とすることが多いです。こちらの記事も参考にして下さい。
(参考記事→いつ初診扱いにするか?

少し注意が必要なのは、逆流性食道炎

逆流性食道炎で、一時的にPPIを内服する場合は良いですが、長期的に内服する場合は、病名に工夫が必要です。ランソプラゾールの添付文書をみると以下のように記載されています。

1日1回30mg ►通常8週間まで.再発・再燃を繰り返す維持療法では,1回15mgを1日1回,効果不十分の場合は,1日1回30mg投与可 

つまり、8週間を超えて、ランソプラゾールを継続する場合は、病名は「逆流性食道炎」では不十分で、8週以降は「再発再燃を繰り返す逆流性食道炎」という病名が必要になります。こちらがないと査定される可能性が高いです。

例えば、4月1日に、「逆流性食道炎」として、ランソプラゾールOD錠30mgを処方し、その後も治療が必要な場合は、8週間後の5月27日からは、「再発再燃を繰り返す逆流性食道炎」という病名に切り替える必要があります。

しかしこれは忘れる可能性が高いです。そのため私は、逆流性食道炎で長期処方が想定される場合は、最初に処方する段階で、以下のように病名を記載します。

傷病名開始日転帰日転帰
逆流性食道炎2025/4/12025/5/26移行
再発再燃を繰り返す逆流性食道炎2025/5/27

はじめからこのようにしてしまえば、忘れることも間違うこともありません。ちなみに4月のレセプト請求分には、5月の病名は載らないため、もし不要な場合は、次回削除してしまえばよいだけです。

忘れないようにするポイントはカルテにチェックリストを作る

病名に限りませんが、患者さんを診察する流れで、忘れないようにするために、カルテを作成するときにチェックリストを自動で引用するように電子カルテにセットを組んでいます。

私がチェックすることは、
#妊娠・授乳確認(女性のみ)
#保険証・医療証またはマイナンバーカード情報確認
#病名登録
#カルテ記載
#サマリまとめ
#検査結果カルテ登録
#検査結果・印刷お渡し
#症状詳記

になります。初診または、再診カルテをセット引用すると、自動的にカルテにこれらが引用されるようにしておき、不要なものはカット、できたものは「◯」をつけていき、全て丸がついた患者さんは、その日のカルテは終了とします。全てが終了すると、その日のカルテ業務は終了し、他の業務に移ります。