このサイトの表題はフルスタック開業医という用語を用いていますが、フルスタックとは元々は主にエンジニアに用いる言葉らしいです。複数の役割をひとりで担うという意味合いで当サイトでは使用させてもらっています。
開業医の先生は、どんな先生でもいくつかの役割をこなしておられると思います。医師、経営者としてはもちろん規模によっては事務長のような役割を兼ねている先生もいらっしゃると思います。今回は私が担うフルスタックについて、ご紹介してみようと思います。
開業医はマルチタスク
勤務医では、仕事は診療が主で、立場が上になってくると管理業務等も増えてくると思いますが、やはり診療が一番であると思います。開業医では、クリニック管理、運営がメインになってきて、診療の割合は勤務医時代に比べるとだいぶ減るような気がします。
ちなみに私のクリニックは、やや特殊な形態なので、私は、医師・経営者としてはもちろん、レセプト事務、事務長?の業務を行いつつ、院内の清掃もしますし、場合によっては受付事務を担うこともあります。少し視野を広げれば、法人の経営者であり、このサイトを運営していることを含めるとブロガー?とも言えるかもしれません。要するに勤務医時代とは大幅に仕事の種類が増えて、その分、仕事に占める診療の割合が縮小せざるを得ない状況になっています。
クリニックでの役割
ある忙しい一日での、私の役割にフォーカスしてみます。いつもお願いしている受付事務さんが休みの日で、家族も忙しい時は、私一人でクリニックを運営せざるを得ません。私以外に本当に誰もスタッフはおらず、ワンオペクリニックとなってしまいます。
そのような日の私は、患者さんが見えたら、保険資格を確認して受付し(受付事務の役割)、診察室にご案内して診察を行い(医師の役割)、診察後にすぐレセプト業務をまとめて(レセプト事務の役割)、処方箋をお渡ししつつ、お会計のご案内をします(受付事務の役割)。
その日の診療終了後は、会計締め作業、会計ソフトへの入力を行い(事務長の役割)、院内の清掃をして(清掃スタッフの役割)、備品のチェック、発注を行い(事務長の役割)、時間があればサイトの記事を更新します。(ブロガーの役割)。
こうあらためて書き出してみると、結構マルチな役割を一人でこなしていることに気づきます。我ながらよくやるものだと思いますが、正直診療に集中できる開業医の先生が羨ましいです。
ちなみに、これらに加えて法人の運営の仕事や、様々な書類への対処、税理士との連絡、診療報酬や医学の勉強など、やることは山積みです。いくら時間があっても足りません。帰宅してからは家族としての役割もあるので、本当にヒマがありません。正直に申し上げて、勤務医時代のほうが自分の時間を持てたと思います。
診療だけに集中したい場合は、勤務医の方が良いかもしれません。
私の形態は例外的だとして、それでも開業医になると、仕事における診療の割合はどうしても縮小し、その分、経営や運営に煩わされる側面は増えてくると思います。たとえ経営が安定して、スタッフも多く雇用して、権限委譲を行い、先生は診療に比較的集中できるようになったとしても、オーナーである以上は、やはり経営にある程度のリソースを割くことは避けられないものと思います。
もし先生が理想とする診療を行いたくて開業をご検討の先生は、開業よりも適切な医療機関を選んで、そこで勤務医としてご活躍された方が先生の理想を叶えられるかもしれません。臨床が好きで、臨床にリソースを多く割きたい先生には、正直開業は向かないかと思います。事務的なことや、診療以外のことに時間を取られてしまうので、そのことがストレスになる可能性が高いです。
開業は目的ではなく手段です。先生の理想の仕事や人生を叶える一つの方法に過ぎません。もっと言えば仕事も、理想の人生の手段のひとつに過ぎないのかもしれません。開業をご検討されている先生に申し上げたいことは、もし開業を迷っているのであれば、現在では転職を含めて先生の理想を実現する手段が他にいくらでもあること、開業前であればいくらでも引き返すことが可能であるということです。間違っても、開業をしようと動き始めたからといって、開業することが目的になってしまうのは、避けていただきたいです。
経営が好きな先生は開業向きであると思います
経営の仕事が好きであったり、書類の処理など、事務的なことが負担にならない先生、むしろそのような業務的な作業や、細かな業務改善が好きな先生は開業向きだと思います。このような先生はおそらく勤務医であることにいずれ耐えられなくなり、遅かれ早かれ開業するか、もっと大きい他のビジネスを立ち上げると思います。そのような先生は周りが何と言っても信念を通して行動し、結果成功する印象です。