電子カルテをクラウドタイプで使用しているクリニックはもちろんですが、予約システム、キャッシュレス対応など、クリニックでインターネット環境を使用しないケースはかなり稀であると思います。そのためクリニックの通信環境は生命線の一つと言えます。多くの場合光回線を導入されていると思いますが、当院では一度、光回線が完全にダウンし、診療不能に陥った事件がありました。開業後で最も焦った日です。こちらの事件についてご紹介してみます。
朝来たら、通信が落ちている、、。
とある日の朝、いつも通りクリニックに来てみると、iPadのWi-Fiが繋がりません。当院ではradikoでラジオを流しているので、朝来たらまずスイッチを入れるのですが、何故か繋がりませんでした。最初はiPadの調子が悪いか、ルーターの問題かと思いましたが、他のPCもネットが繋がりません。これはまずいと思い、すぐにWi-Fiを再起動して、復旧を試みたものの、何をしても繋がらない状況です。開院まで時間がありません。この時点でかなり焦っていました。よくよくケーブル類を確認してみると、なんと光回線のケーブルが断裂していました。噛んだような痕もあります。このときやっと原因を理解しました。光回線のケーブルがネズミによって、食いちぎられ、断裂していたのです。
とにかくできる対応をしなければということで、携帯電話のテザリング機能を使って、ひとまずパソコンになんとかつなぎ、予約枠を閉じました。しかしすでに10件近く予約が入っています。午前中に復旧することは不可能と判断し、患者さんに電話をかけて、事情を説明し、可能な限りキャンセルとして貰いました。クリニックの経営にとっては痛手です。しかしそんなこと行っている場合ではありませんでした。
どうしても連絡がつかない数人は、来てもらってから謝罪するしかないかと思っていましたが、スマートフォンのテザリングでも、電子カルテはなんとか動き、なんとか数人なら診療可能だったので、時間がいつもよりかかるものの、なんとか乗り切れました。M3 DigiKarが軽い電子カルテで本当に事なきを得ました。ちなみに光回線が止まると自動精算機も止まります。特にキャッシュレスはオンラインでないと全く機能しません。幸い、予約システムのカード払い機能や、少し用意しておいた現金の用意で会計もなんとか乗り切れました。
お昼休みに、すぐに家電量販店に断線したケーブルの代わりを買いに行きました。しかしそのケーブルがやや特殊なもので、一般的な量販店では手に入らないものであることがわかりました。これには困り果てました。しかしよくよく冷静になってみると、家にも光回線は通っています。こちらを代替で利用できないかと繋いで見たところ、やっと復旧しました。ようやく通常体制に戻れて、午後の外来はなんとか通常通りに再開することができました。
反省点
もともと当院はあらゆるものをフルデジタル化を進めており、そのため万が一光回線が止まったらかなりまずいことになることは予測していました。そのため、Wi-Fiの機械も代替のものを用意したり、LANケーブルも予備をいくつか用意したりと、自分なりに対策はとっているつもりでした。しかしまさか光回線を動物に食い破られるとは思いもよりませんでした。
考えてみると、シグナルはいくつかありました。一つは夜中に警備システムが一度作動したこと、もう一つは原因不明のブレーカー落ちが起きたことでした。これらもネズミが侵入していたと考えると全て説明がつきます。これをきっかけに、何か予測しないことが起きているときは、何かしらの問題が生じている可能性を疑うようになりました。
対策
ネズミがどこから侵入したのかと考えて、点検すると、エアコンのダクトに一部スペースができていました。おそらくここから侵入したのでしょう。すぐにパテを購入し、自力で塞ぎました。クリニック経営者は工事までやるものかと思いましたが、そんなこと言っていられません。
またクリニック終了後帰宅する際に、ネズミよけを設置することにしました。今のところ、ネズミは見ていないので一定の効果はあるのかもしれません。
光回線が再度止まったときのことを考え、予備回線としてWiMAXを導入しました。正直コスト的には痛手ですが、代替の通信手段を用意しておけば、万が一何かあった時も対応ができます。ある意味保険と思って導入しています。
結構困ったのが、通信が切れると、キャッシュレス決済が使えなくなってしまうことです。当院の自動精算機は有線接続しかできず、平時の回線でないと上手く通信ができない使用になっており(セキュリティ上の使用らしいです)、WiMAXでは使用できません。そのため、万が一のために代替のキャッシュレス手段を用意しました。私が使用しているのはSquare(スクエア)というシステムです。こちらが優れているのは、決済手数料がやや割高なものの、維持費用がかからず、使いたいときだけ使用できる点です。機器もSquareリーダーが5000円ほどですが、もともと持ってるiPhoneが使えるので安価に導入可能です。これは結構おすすめだと思います。
振り返り
この事件のあと、ダクトの穴を塞ぎ、代替通信手段の確保、キャッシュレスの手段の増設など、色々な対策をとり、クリニックの体制はより万全になりました。クリニックをやっているとこのような予想もできないようなことも起こります。全てのことに対策をあらかじめ取ることは現実的には不可能だと思いますが、今回のことから、やはり何らかの通信手段は代替で用意してくことが、あらゆる先生にとって良いのではないかと思います。