今回は病名の付け方、記載について考えていこうと思います。勤務医のうちは、病名については、医事課が代行入力してくれるケースも少なくないので、あまり気にとめない先生が多いと思いますが、開業医になると、病名の記載は保険請求の上で非常に重要になります。病名がない検査、投薬はまず査定・減点されてしまうため、クリニックの経営上、死活問題になります。
以下で代表的な注意点について考えていきます。

治癒にするか?中止にするか?

病名の転機として、継続する以外では、主に治癒か中止かということですが、これは最初多くの先生が迷われると思います。急性上気道炎や、虫刺症などでは、落ち着けば明らかに治癒でよいですが、一般的に治癒するとは考えにくいアレルギー性鼻炎やアトピー性皮膚炎、また通院が途絶した高血圧症などでは、どのように考えていくかという問題です。

結論としては、私は上記のような治癒が難しい患者さんで、一定期間来院がない場合は、中止としています。例えばアレルギー性鼻炎で、内服を1ヶ月処方して、3ヶ月ほど来院がなくても、治癒とするのは、違和感があるためです。外部機関にも相談したところ、そのような処理が一般的という回答を頂いております。

どのくらい来院がなければ中止としてよいか?

これについては、医科診療報酬点数表に関する事項に一つ目安となる記載があります。

(14) 患者が任意に診療を中止し、 1月以上経過した後、 再び同一の保険医療機関において診療を受ける場合には、 その診療が同一病名又は同一症状によるものであっても、 その際の診療は、 初診として取り扱う。 なお、この場合において、 1月の期間の計算は、 例えば、 2月 10 日~3月9日、9月 15 日~10 月 14 日等と計算する。

(15) (14)にかかわらず、 慢性疾患等明らかに同一の疾病又は負傷であると推定される場合の 診療は、 初診として取り扱わない。

つまり内服が切れてから、1ヶ月以上経過すれば、初診として扱うことが可能であるという一つの基準です。しかしその下にある、「明らかに同一の、、、、」についての記載はどのように扱うかが、難しい問題と思います。

たとえば季節性の花粉症で、3月から6月まで抗アレルギー薬の処方を行った患者さんが、翌年また3月に来院された場合、これは病名を一度中止にて、初診扱いでよいと思います。

しかし高血圧症で2-3年通院されている患者さんが、何らかの理由で内服がきれてから、ギリギリ1ヶ月以上空いてしまった場合、これを初診とするのは、少し無理があるように思います。高血圧症の場合は、再診で生活習慣病管理料2の加算を取ったほうが保険点数が大きくなるので迷わないと思いますが、たとえば高尿酸血症の場合は、初診の方が高くなるので、迷われる先生もいらっしゃると思いますが、このケースでは再診扱いにする方が、適切と思います。

個々のケースを説明し切るのは困難であるため、上記のようにやや曖昧な部分を残しているのだと思います。これについてはケース・バイ・ケースでの判断になると思います。

慢性、急性の区別が必要なもの

心不全など慢性、急性の区別が必要なものについては、記載する必要があります。私も実際に新規個別指導にて、心不全、腎不全などはかならず急性、慢性の区別をするように指導を受けました。基本的にクリニックでは慢性の管理が主となると思います。電子カルテのアラートで、病名入力がない場合は指摘してくれますが、急性、慢性を入れるところまでは指摘されないので、ここらへんは先生ご自身で気をつけて頂く必要があります。

皮膚疾患は必ず、部位も入れる

ステロイド外用剤などは、皮膚科の先生以外でも、ちょっとした湿疹などで処方をすることがあると思います。この場合、単純に湿疹の病名をいれておけば、電カル的には指摘されませんが、皮膚疾患には、基本的に部位の入力が必要です。また左右の区別もあった方が良いです。両側の場合は、両側と記載するほうが無難です。

たとえば左下腿の湿疹の場合、病名は、#左下腿湿疹 と正確に記載する必要があります。両側の場合は、#両下腿湿疹、#両側下腿湿疹、などとするほうが無難です。

顔面のざ瘡などでは、さすがに左右の区別は不要ですが、単純に#尋常性ざ瘡、とするよりも、#顔面尋常性ざ瘡とする方が良いです。

またこちらは今回のテーマと少しずれますが、皮膚外用剤を処方する場合は、かならず塗布部位の記載が必要です。お薬手帳をみると、「部位:全身に」などと省略している先生をたまに見かけますが、これは危険だと思います。全身の皮脂欠乏症で、本当に保湿剤を全身塗る必要がある場合は、「塗布部位:両側四肢、体幹、顔面に。」などとする方が、良いかと思います。これは調剤薬局さんから指摘されることもありました。

レセスタの利用

電子カルテの病名チェック機能もありますが、完璧でないところもあると思います。私が使用しているM3 DigiKarも薬剤の病名チェック機能は割と優れていますが、検査などは自力でチェックせざるを得ないです。

病名のチェックについては、わたしは開院1年ほどはレセスタという、他社のソフトを使用していました。こちらは病名チェック機能に加えて、急性上気道炎など、急性病名が長く続いているときもチェックしてくれたり、レセプト返戻で疑問が生じたときも、返戻カルテを送ると問題点を指摘してくれたり、結構良かったです。またメールで診療報酬全般に質問することもできました。私はあまり使用しなかったのですが、訪問診療の複雑怪奇な制度にも詳しいようです。

私は1年ほど使用して、ほとんど指摘されることがなくなったため、コストカットの問題もあり使用をやめましたが、割とおすすめ出来るソフトであると思います。特に開院当初はキャンペーンもあるので、おすすめです。当院も一定規模の診療所であれば、使い続けたと思います。