多くの電子カルテには、患者サマリーや患者メモといった機能があります。M3デジカルにも「患者メモ」があり、受付画面やカルテを最初に開いた際に、患者さんのちょっとした情報をすぐ確認できるようになっています。各社の電子カルテで形態はさまざまだと思いますが、このような機能自体は多くの電子カルテに備わっているのではないでしょうか。

当院では、最初はこの機能をあまり使っていませんでした。その後、いろいろと試行錯誤しながら使い方が変わってきたのですが、現在ではかなり便利な機能だと感じています。M3デジカルの場合、「患者メモ」と「サマリー」という2つの機能があるため、今回は私がどのように使い分けているのかについてご紹介してみようと思います。

サマリーを使い始める

風邪症状で1回受診して終わりという患者さんや、年に1回程度しか来院しない患者さんの場合、サマリーを見る機会はそれほどありません。一方、定期通院している患者さんについては、病状の経過をカルテに記載していくと、どうしてもカルテが長くなって見づらくなります。そのため、重要な情報を要約してサマリーに記載するという使い方は、以前から時々行っていました。

ただ、最初は私自身も手探りで使っていました。患者さんによっては、たまにしか来院しない方でも、「この薬が苦手」「抗原検査で鼻に綿棒を入れられるのがどうしても苦手」といった、次回の診療時に知っておいた方がよい情報があります。そうした情報も、以前はサマリーに少しずつ書いていました。

ところが、たまにしか来院しない患者さんの場合、そもそも「この患者さんのサマリーに何か書いた」ということ自体を忘れてしまいます。サマリーを開けば情報はすぐに確認できるのですが、そもそもサマリーを見るという発想にならなければ、その情報は目に入りません。その結果、以前確認したことをもう一度聞いてしまったり、例えば「喘息はありますか」と同じ問診を繰り返してしまったりすることがありました。もちろん、それ自体が致命的というわけではありませんが、診療が少し冗長になります。ここをどうにかできないかと考えていました。

サマリーより患者メモの方が向いている情報もある

そこで注目したのが「患者メモ」です。M3デジカルの場合、受付一覧にも小さいながら患者メモの内容が表示されますし、カルテを開いた際にも比較的大きく表示することができます。そのため、サマリーと比べると見落としが起きにくい機能です。

「これはもっと使った方がいいのではないか。むしろ短い情報については、サマリーよりこちらの方が使いやすいのではないか」と考え、途中からいろいろな情報を患者メモに記載するようになりました。

最初に使い始めたのは、マイナ保険証を利用する患者さんかどうかという情報でした。マイナンバーカードによる保険資格確認が始まった当初はまだ普及しておらず、従来型の保険証を使う患者さんとマイナ保険証を使う患者さんが混在していました。一方、比較的早い段階からマイナ保険証を使っていた患者さんは、その後も継続して利用することが多かったため、毎回確認するよりも「マイナ保険証を使用」と患者メモに書いておいた方が楽でした。これが、私が患者メモを積極的に使い始めたきっかけの一つです。

その後は、「サマリーに記載あり」ということを患者メモに書き、サマリーを確認する必要がある患者さんだと分かるようにしたこともありました。ただ、使っているうちに、「特に重要なことなら、サマリーではなく患者メモにそのまま書いてしまった方が早いのではないか」と考えるようになりました。

現在は、長い内容についてはもちろんサマリーに記載しますが、「この検査が苦手」「錠剤希望」といった短い情報については、患者メモに直接記載しています。そうすることで、診療前に必ず目に入るようにしています。

診療前に患者さんごとの「設定」を確認する

患者メモを読んでから診療を始めることで、その患者さんに合わせて少しチューニングしてから診療に入ることができます。Claude Codeでいうところの「CLAUDE.md」のような役割を患者メモが果たしている、と考えると近いかもしれません。かなりマニアックな例えですが。

私が実際に患者メモへ記載しているものとして多いのは、まず先ほどの「マイナ保険証を使用するかどうか」です。また、サマリーにある程度まとまった情報を書いている患者さんについては、「S」などと自分で分かる記号を入れて、サマリーの確認が必要だと分かるようにしています。

そのほかにも、「鼻の検査が苦手なので、できるだけ浅めの鼻腔で行う」「粉薬が苦手なので漢方薬は難しい」「なかなか受診できないため、病状的に問題がなければ風邪薬を14日分など少し多めに希望する」といった情報を書いています。また、「オンライン決済を利用しているが、領収書は紙で欲しい」といった希望を記載することもあります。

もう一つ、意外と便利なのが「前回採血あり」といった記載です。前回の診療で血液検査を行ったことを患者メモに書いておけば、次回来院時に検査結果を渡し忘れることを防ぎやすくなります。ほんの一言ですが、こうした情報も患者メモと相性がよいと思います。

なお、今回の趣旨からは少し外れますが、当院ではTampermonkeyを使ってM3デジカルの操作を拡張しており、こうした患者メモの入力についても、毎回手入力するのではなく、ワンクリックで登録できるようにしています。よく使う文言や記号をその都度入力するのは、それ自体は数秒の作業ですが、診療人数が増えると積み重なって負担になります。こうした部分まで含めて自動化しておくと、患者メモを使うハードルそのものが下がります。このあたりの電子カルテのカスタマイズについては、姉妹サイトの「Clinic Tech Lab」でも詳しく紹介しています。(参考:Clinic Tech Lab 電子カルテ自動操作ツールTampermonkeyの衝撃

また、あまり良い話ではありませんが、対応上少し注意が必要な患者さんもいらっしゃいます。通常とは異なる対応が必要であったり、かなり細かな要望があったりする場合には、院内でのみ意味が分かる記号などをつけ、診療前に注意できるようにしています。こうした情報についても、長文で詳細を書くというよりは、診療前に「少し注意しておこう」と思い出せる程度の情報を患者メモに残しておく方が使いやすいと感じています。

数クリックでも減らせると診療は楽になる

患者メモを使い始めてから、診療はかなりスムーズになりました。以前、主にサマリーを使っていた頃は、結局カルテを開いてサマリーを確認しなければ、患者さんについて注意すべきことが分かりませんでした。しかし患者メモに入れておけば、受付画面の一覧からでも情報を確認できます。

実際には数クリック程度の違いです。ただ、その数クリックや、「この患者さんは何か注意点があっただろうか」と思い出す作業が積み重なると、それなりに負担になります。患者メモを使えば、そうした小さな手間を減らすことができます。

また、毎回同じことを聞く必要がなくなり、ある程度の前提を共有した状態から話を始められるため、患者さんとのやり取りもスムーズになります。こちらとしても、「何を確認しなければならないか」を毎回ゼロから考える必要がなくなり、頭のリソースを節約して診療できる感覚があります。

これは単純なクリック数の削減というだけではなく、「この患者さんについて何か注意することがあっただろうか」と記憶をたどる作業を減らせるという点も大きいと思います。診療前に必要な情報が目に入るところに置いてあれば、自分の記憶に頼る必要がありません。特に患者数が増えてくると、個々の患者さんについて細かな情報をすべて覚えておくことは現実的ではありませんので、電子カルテ側に情報を持たせておくことには意味があります。

現在の私の使い分けとしては、長く残しておきたい病状や経過はサマリー、診療前に必ず目に入れておきたい短い情報は患者メモという形になっています。

電子カルテにはさまざまな機能がありますが、こうした一見地味な機能でも、使い方を工夫すると日々の診療を少しずつ楽にしてくれます。患者メモについても、最初から明確な運用方法があったわけではなく、実際に診療しながら使い方が変わってきました。今では、診療を始める前に患者さんごとの「設定」を確認する場所として、かなり重要な機能になっています。

特別な機能ではありませんし、導入したからといって劇的に診療時間が短くなるようなものでもありません。ただ、毎日の診療の中では、こうした小さな工夫の積み重ねが意外と効いてきます。患者メモに何を書くかを少し意識するだけでも、電子カルテを単なる診療記録の置き場ではなく、診療をスムーズに進めるための補助ツールとして、もう一段使いやすくできるのではないかと思います。