日々の診療で忙しい中、「カルテを書く時間がもっと短くならないか」「文章を書く作業が負担になっている」と感じることはないでしょうか。

音声入力は一昔前まで、精度が低く、かえって手間が増えるツールという印象が強かったかもしれません。しかし最近では、認識精度や操作性が大きく改善し、診療現場や文章作成において実用段階に入ったと感じています。

本記事では、当院で実際に使用している音声入力の環境や運用方法、さらに生成AIと組み合わせた活用法について、開業医の視点から整理してみたいと思います。

音声入力は「実用段階」に入ったと感じています

一昔前の音声入力は、変換精度が低く、使うとかえって時間がかかる印象がありました。そのため、「試してみたが結局使わなくなった」という先生も多いのではないでしょうか。

Aqua Voiceしかし、現在の音声入力は精度が大きく改善しており、日常診療の中でも十分に使えるレベルに達しています。特に、ある程度まとまった文章を入力する場面では、キーボード入力よりも明らかに楽だと感じています。

今回は、当院での使用状況を踏まえつつ、音声入力がどのように役立っているかを共有します。

使用しているデバイスと環境について

当院では、音声入力専用としてマイクアームと外付けマイクを使用しています。

・Logicool G Blue Yeti ゲーミングマイク
・サンワダイレクト製 マイクアーム

ノートPCの内蔵マイクでも音声入力は可能ですが、専用マイクを使用することで認識精度と安定性は明らかに向上します。診察室では、マイク位置を口元に固定できる点も実用的です。

音声入力ソフトは専用ツールの方が使いやすい

音声入力ソフトについては、「Aqua Voice」というサービスを使用しています。

WindowsやMacに標準搭載されている音声入力機能でも、最低限の用途には対応できます。特にMacの音声入力は完成度が高く、軽い用途であれば純正機能でも問題ありません。

一方で、Windows環境では操作性にやや癖を感じる場面もあり、余力があれば専用ソフトを導入した方が快適だと感じています。AQUAVOICEには無料版もあるため、まずは試してみて判断する形で十分でしょう。

音声入力でカルテ記載が楽になりました

音声入力を導入して感じた変化のひとつが、カルテを以前より丁寧に書くようになった点です。

従来は、どうしても要点を絞ったサマリー中心の記載になりがちでしたが、音声入力では「話すだけで記録できる」という感覚があるため、自然と記載量が増えます。

患者さんとの短い雑談や生活背景に関する一言なども、無理なく記録できるようになり、診療の文脈を残しやすくなったと感じています。

指導内容は「打つ」より「言う」方が圧倒的に楽

特定疾患や生活習慣病の指導内容については、キーボードで打つよりも音声で説明する方が圧倒的に楽です。

実際に使ってみると、テキストは「打つ」より「話す」方が明らかに負担が少ないと実感します。変換ミスはゼロではありませんが、現在の精度であれば後から軽く修正するだけで済みます。

タイピングが非常に速い先生であれば必要性を感じにくいかもしれませんが、一度は試してみる価値のあるツールだと思います。過去に音声入力を試して断念した先生ほど、今の進化を体感していただきたいところです。

生成AIを併用するとさらに楽になります

音声入力には、どうしても誤変換や冗長な表現が混ざります。これを人力で整えることも可能ですが、現在は生成AIを併用する方が圧倒的に効率的です。

音声入力でカルテに書きたい内容を一通り話し、それをChatGPTなどの生成AIに「カルテ用に整理してほしい」と依頼するだけで、かなり完成度の高い文章が得られます。

コピー&ペースト中心で成立するため、記録作業の心理的ハードルは大きく下がります。

簡易的なメディカルシライバーとしての活用

規模の大きな医療機関では、メディカルシライバーがカルテ記載を補助するケースもありますが、一般的な開業医にとって専任配置は現実的ではありません。

音声入力と生成AIを組み合わせることで、完全ではないものの、簡易的にシライバーの役割を担わせることは十分可能です。人手を増やさずに記録の質と効率を上げる手段として、有効な選択肢だと感じています。

実はこの記事も音声入力で書いています

鋭い先生であればすでにお気づきかもしれませんが、実はこの記事自体も音声入力を使って作成しています。

最近では、私が伝えたい内容を一気に話し、それを音声入力で文字起こしした上で、ChatGPTに貼り付けて構成や表現を整えてもらう、という流れで記事を書くことが増えています。

ブログを始めた当初は、当然すべてキーボードでタイピングして記事を書いていました。1記事あたり2〜3時間はかかるのが普通で、調べ物や資料作成を伴う内容になると、3日ほどかけて書いていた記事もあります。正直なところ、「1記事書く」という行為そのものがかなり重たい作業でした。

音声入力と生成AIを使うようになってからは、記事作成にかかる手間が明らかに減りました。それに伴い、「記事を書くこと」への心理的ハードルもかなり下がったと感じています。

以前は、「このテーマで書きたい」と思っても、時間が取れずに後回しにしているうちに気持ちが薄れてしまい、結果的に書かずに終わってしまったネタも少なくありませんでした。

現在では、書きたい内容が浮かんだタイミングで、10分から15分ほど時間を作り、一気に話してしまいます。それを音声入力で文字に起こし、後からChatGPTに構成を整えてもらい、自分の意図とずれている部分だけを修正する。この流れだけで、十分に1本の記事として成立します。

この方法であれば、30分程度あれば1記事を書くことも可能です。忙しい診療の合間でもアウトプットを継続できるという点で、非常に相性の良いツールだと感じています。

情報発信のスタンスについて

もちろん、すべてを手書きで書いた方が、私自身の熱量や細かな意図は伝わりやすいということは十分承知しています。実際、記事を見直してみると、その点ははっきりと感じます。

ただ、このブログを読んでくださっている先生方の多くは、文章表現そのものよりも、診療や実務に役立つ情報を得ることを主な目的としているのではないかと考えています。その意味では、音声入力と生成AIを活用した形であっても、必要な情報を拾い上げることは十分可能だと思っています。

記事一つひとつの完成度を極限まで高めることと、できるだけ多くの有用な情報を継続的に発信していくこと。この二つを天秤にかけた結果、現時点では「出せる情報はなるべく形にして公開する」方が、読者の先生方にとっても利益が大きいのではないかと考え、最近はこの方法を取っています。

まとめ

音声入力は、すでに試験的なツールではなく、日常診療に組み込める実用段階に入っています。特に生成AIとの併用により、カルテ記載や文章作成の負担を大きく軽減しつつ、記録の質を保つことが可能になります。

過去に一度音声入力を諦めた先生こそ、現在の音声入力環境を改めて試してみてもよいのではないでしょうか。