経費削減効果について考えたことはあるでしょうか?売上を増やすのはなかなか難しいですが、経費削減については少しの工夫で可能です。少し見直すだけで月額数万円、年間にすると数十万円削減することは可能です。そしてそれは資産運用や増収に換算するとかなり大きい額になります。今回は今までも何度か取り上げてきたコストカットについて、別の切り口で効果を考えてみます。

資産運用の威力について

投資の世界では、年率5-7%ほどは現実的なリターンです。今回は税金を考慮して、少し厳し目に見積もって、3%のリターンが得られる金融商品を考えてみます。税引き後に3%というのは、インデックスファンドでは、現実可能なリターンです。高配当ETFだとやや厳しい年もありますが、元本成長も考慮すれば遠くない値だと思います。

3%のリターンでは、100万円投資した場合、年間3万円得られることになります。医師の場合は、なんだたった3万円かと思われるかもしれませんが、これでもややコスパが悪い午前外来のアルバイトに1回分に匹敵します。それが不労所得として得られるのは大きいと思います。

またこれが100万円でなく、1000万、一億円となってくると無視できない金額になります。1000万では年間30万円になりますが、これは割の良いアルバイトを週一回行った場合、約一ヶ月分の給与に匹敵します。1億円になれば年間300万円です。ここまでくると、週に1回、非常勤でアルバイトをする場合の手取り年収に近くなります。考え方を変えると、1億円運用している先生は、週に1回、先生のためにアルバイトをしてくれる医師を抱えているようなものです。しかもこれは半永久的に続きます。

年間3万円の経費削減は100万円の金融資産に匹敵する

上記を踏まえると、年間3万円削減できることは、先生が金融資産100万円持っているのと同じような効果を生みます。100万円を実際に用意するのは、医師でも結構大変ですが、コストカットは少しの工夫で比較的容易です。年間3万円の削減は、月にすれば2500円の削減です。これなら少しの工夫で可能と思われるのではないでしょうか?

これはコストカットの金額が大きくなれば、当然効果も大きくなります。以前の記事(参考記事→診療報酬が上がらない時代に、どう生き残るか?開業医の現実的コスト削減策)でもご紹介しましたが、私は最近税理士の契約を終了し、年間約50万円の経費削減を行いました。上記の比率で計算すると、50万円の経費削減は、なんと1670万円の金融資産に匹敵することになります。しかもコストカットは一度行えば、それを続ける限り永久に続きます。1670万円を手元に用意するのは、たとえ年収は2000万円を超えるような先生でも、税金や生活費を考慮すると少なくとも数年はかかると思いますが、これが一瞬でできるわけです。

年間3万円の経費削減は43,000円の増収に匹敵する

コストカットについては、金融資産ではなく、増収に換算して考えることもできます。今回は通常の経営ではなく、措置法26条を用いた場合を想定します。(参考記事→コストカットに躍起になる理由)気持ち的には経費は自分の財布から払っている感覚です。

例えば、10万円の売上増加があった場合、検査等の変動経費の割合を1割として、税金を引いて手元に残る金額をざっくり7割と想定します。(※これは診療所の状況によってかなり異なるため、ざっくりの概算です。また固定費は考慮していません。)その場合10万円の売上が増えた場合、7万円使うことができる計算になります。

逆に考えれば、7万円使うお金を確保しようとした場合、10万円も売上を増やさなければならない計算になります。使いたいお金の、約1.42倍売上を増やさなければならないわけです。これは結構大変です。

先の例で言えば、年間50万円経費を削減した場合、約71万円の増収負担を軽減したことになります。固定費を差し引くと、私のクリニックでは、約一ヶ月分の売上に匹敵します。極論すれば12ヶ月のうち、1ヶ月間は、税理士さんのために働いていたようなものです。そのように考えるとかなり大きいです。

ちなみにですが、この考え方は開業医だけでなく、給与所得の勤務医の先生でも応用できます。特に高給の給与所得の場合は、税金で削られる割合がエグいので、先生によっては10万円の買い物をしたい場合、15万円から20万円もの給与を稼がなければならない計算になります。

このように考えると、コストは無視できない

視点を変えてみると、コストについて違った見方ができると思います。特に開業時はそうですが、大きなお金が動く経験をすると、だんだん金銭感覚がバグってきます。数十万円の経費ではあまり驚かなくなる時期もありますが、これは危険信号です。特に近年はサブスクリプションが主流ですが、塵も積もれば山で、あっという間にコストが膨れ上がってしまいます。サブスク貧乏は他人事ではないと思います。

売上が良いうちは問題ないですが、どんなに流行っているクリニックにも、閑散期や思うようにいかない時期はあります。それこそCOVID-19のように誰にも想定できないことも、急に起こりえるわけです。それらに備えてコスト意識を高めておくことは重要だと考えます。

保険診療は、一人当たり数千円の薄利多売のビジネスです。たった3万円と思うかもしれませんが、再診処方のみの患者さんの場合、単価が約2000円なので、3万円でも15人分の診察に匹敵します。このように考えると軽く考えることはできないと思います。