近年は本当に色々なものが値上がりしています。長らくデフレであった日本も世界の流れに合わせて、変わってきているのだと思います。クリニックの経営という観点でみると、かなりきつい状況です。保険診療である以上、値上げをするわけにも行かず、診療報酬は削減の一方ですので、事実上コストカットに取り組むしかない状況です。最近当院で行ったコストカット、検討中のコストカットについてご紹介していきます。

携帯電話

携帯電話については、従来はUQモバイルやYmobileなど、大手のジェネリック回線を使用していましたが、ここ最近は日本通信simという回線に切り替えました。300円以下で電話番号を維持可能で、20GB通信+70分無料通話でも1400円以下です。こちらで通信費の節約を行っています。たしかにお昼時や混雑している環境では通信速度は遅くなりますが、家でもクリニックでもWi-Fiがつながっているので、個人的にはあまり気になりません。大手の携帯電話で毎月1万円近く払うのは、もったいないです。

学会も見直す

学会も意外と維持費がかかります。私は専門医を維持する以外の学会は思い切ってカットしました。コストカットもそうですが、ダイレクトメールや学会誌が送られてくる、紙のムダ遣いが地味にストレスだったので、その面でもよかったと思います。

税理士を辞める

開院してからしばらくお世話になっていた税理士も、最近契約を終了しました。元々、日々の会計業務は、マネーフォワードにて自分で行っており、数年プロに見てもらって、ある程度要領も掴んだので、日常では特に困りません。年末の確定申告の資料もいただいたので、これからは自分でなんとかなるかと思います。問題なのはマイクロ法人の方ですが、どうしても難しければ、最悪決算のみスポットで依頼することもできますし、マネーフォワードと「全力法人税」というソフトで、私の規模であればなんとかなりそうです。

税理士費用の削減は大きいです。年間では50万円弱の削減になります。当院の規模では、閑散期の1ヶ月分は税理士さんのために働いていたようなものです。私の事務負担は多少増えますが、全体的にみると、負担はかなり軽減されました。

自動精算機も見直しを検討

当院はテマサックproという自動精算機を使用しています。こちらは使い勝手が抜群で、患者さんからも好評なのですが、月額使用料が結構かかるのがネックです。開院当初は現金の患者さんも多く、事務さん一人分に近い仕事をこなしてくれたので重宝しました。しかし最近は予約システムでオンライン決済を選択する患者さんが増えてきたので、一日に数名の使用に留まっています。こちらも年間では40万円近いランニングコストがかかるので、固定費がかからないものに変更を検討しています。

ある開業医の先生の言葉

以前、ワンオペで運営されている先生のインタビューを拝見し、印象に残っている言葉があり、「お金がないのになぜ、そんなことにお金をかけるのか?」という旨のお話がありました。たしかにそうだなと、私も思いました。資金的に余裕がある場合、時間や快適さをお金で買うというのは、合理的であると思います。患者さんが溢れているクリニックで、院長先生が税理士や社労士の事務仕事をするのはさすがに違和感があります。しかし最少人数やワンオペで回しているクリニックでは、事務仕事もある程度ご自身で行って、コストを削減するのは、合理的な方法です。今後どうなるかは不透明ですが、保険診療が縮小していくことは避けられず、診療所経営は厳しさを増すことが予想されます。コストカットに経営者として向き合っていくことは、重要な生存戦略となると思います。

まとめ

保険診療では大きな収益アップが難しい今、コストを見直すことはクリニックを安定して続けていくための、現実的な方法のひとつだと思います。今回ご紹介した内容はどれも小さな工夫ですが、積み重ねることで、年間で見ると意外と大きな節約になります。

限られた資源の中で、どこにお金をかけて、どこを抑えるかは、開業医にとって常に考え続けるテーマです。これからますます厳しくなっていくかもしれない医療経営の中で、柔軟に、そして無理のない範囲で工夫を重ねていくことが、長く続けていくためのヒントになるのではないでしょうか。この記事が、同じように日々の経営に向き合っている先生方にとって、少しでも参考になれば幸いです。