COVID-19の流行で、発熱外来という概念が一般的になりました。以前は、インフルエンザが流行している時期でも、普通の外来の患者さんで同じ待合室で待機したり、せいぜいパーテーションで区切るなどの対応が一般的でした。しかしCOVID-19流行により、感冒症状を有する患者さんと、そうでない患者さんを分けることが一般的になりつつあると思います。今回は発熱外来について考えていきます。
新規開業では、発熱外来は始めから作ってしまう方がいい
内科、小児科、耳鼻科など、COVID-19やインフルエンザ、風邪などの感染症を診察する先生は、はじめから発熱外来を分けて作ってしまう方がよいと思います。理想は通常の外来と完全に導線を分けてしまうことです。入口も2箇所作って完全に分ければ盤石ですが、それが構造上難しい場合も、発熱患者さんと、そうでない患者さんは分離して、待機、診察できるスペースが、これからの先生には必須になると思います。
COVID-19が流行したときは、元々開業されている先生は本当に大変でした。駐車場にテントを張って臨時診察室をつくり、そこで診察していた先生もいました。夏はフルPPEの装備をして、汗だくになって診察していたそうです。また構造上どうしても分けることができず、やむを得ず発熱患者さんはお断りせざるを得ない先生も多かったと聞きます。
発熱外来の実際
私は開院時にCOVID-19が猛威を振るっており、その当時はいつ収束するのか全く見通しが立たないような状況でした。正直、作ったはいいものの、すぐに使わなくなるかもしれないと思いつつ、最終的には発熱外来を作るプランで内装をお願いしました。この決断は、結果的には正解でした。開業後、新規開業の当院に来院されたのは、8割以上が発熱患者さんだったためです。開院してしばらくは、慢性疾患の患者さんはほぼ見えない状況でした。
当院では、発熱等ある患者さんと、そうでない患者さんを完全に分けるために、入口から分けることにしました。狭いクリニックにもかかわらず、構造上かなり無理があるような格好になりましたが、小さいながらも発熱専用の待合室、診察室を設けています。検査室などは当然作れなかったので、各種検査は診察室で私が行っています。
いまから振り返ると、発熱以外の疾患でかかる患者さんよりも、今だに発熱外来で受診する患者さんの方が多い状況なので、もう少しスペースに余裕を持ってもよかったかな、と感じています。今から作る先生は、テナントが広く余裕があれば別途、検査室を設けて、看護師さんに検体をとってもらうということも出来ると思います。
外来は完全予約制にしています。当初は発熱外来のみ予約制でしたが、様々な経緯があり、現在は通常外来も含めて予約制にしています。予約制の方が圧倒的に診療がスムーズで、患者さん、当院にとっても確実にメリットの方が大きいと感じています。少なくとも発熱外来については、予約制が現実的であると思います。
内装費がかかる
入口を増設したり、一般的に仕切りを多くすると、その分内装費用はどうしてもかさんでしまいます。当院も、当初は1000万円ほどの予定でしたが、結局修正を重ねて、最終プランでは400万円近く余計にかかってしまいました。坪単価からしたらかなり高額です。もちろん発熱外来には今もかなり助けられていますが、もう少し費用を抑えることは、工夫すればできたかと思います。
これからは新規開業では一般的
現状のクリニックでも、風邪の患者さんと、高血圧の患者さんが同じ待合室で診察を待つようなことは、もはや無くなりました。COVID-19の流行で一気に患者さん側の意識も変わりました。患者さんも医療機関に来て何か感染を拾うことは絶対避けたいわけです。何かしら対策を講じての診察が一般的になっており、たとえば10年もすれば、感染症疑いの患者さんは入口から分けることが普通になるかもしれません。また、感染症を分けて診察していることが分かれば、慢性疾患の方も安心して受診することが可能で、患者さんから選ばれるひとつの要素になるかもしれません。
診療報酬での優遇は少しあるが、わずか
COVID-19流行下では、空間的、時間的に発熱患者さんを分けて診察すれば、一定の診療報酬での評価がありましたが、現在は通常に戻り、わずかな加算があるのみです。具体的には2024年6月からは、200円の加算です。従来の加算に比べればわずかですが、発熱外来を分離することで、診療報酬そのものよりも、患者さんに選ばれる、診療が安全に行えるなどのメリットがあると考えています。
こちらとしてもやりやすい
実際に私もやってみて実感したことですが、通常の外来と、感染症の外来を分けると、こちらとしても診療がやりやすく、ストレスが減ります。診察ごとにガウンや手袋を着脱したりなど、たしかに面倒なこともありますが、こちらも適切な対策をすることで、多くの感染症患者さんを診察しているにもかかわらず、感染症を拾うことは稀です。私は開業以降、ほとんど風邪を引くことがありません。勤務医時代のほうがよく風邪を引いていたくらいです。
スペースは最小限でもなんとかなる
発熱外来を別途設けようとすると、テナントにもよりますが、どうしても手狭になってしまいます。私は発熱外来を作る代わりに、検査室・処置室を設けることは諦めました。狭いながらの工夫ですが、私は発熱外来では、座らずに、立ったまま診察を行っています。机もスタンドタイプのものを購入して対応しています。立ったまま診察すると、スペースをかなり節約できますし、抗原検査を行うときも立ったり座ったりする、ひと手間が無くなるので、結果的に時短になっています。受診する患者さんには少しせわしない印象を与えてしまう可能性もありますが、そこは全て理想通りにはいかないと、割り切っております。
余談ですが、私は、KANADEMONOというメーカーの机を使用しています。1cm単位でオーダーができるので、ピッタリのものを作れます。セミオーダーでやや値がはるものの、高すぎることもなく、クオリティも良いです。一般外来でもこちらの机を使用しており、気に入っています。