クリニックの運営において、インターネット回線は日常業務を支える重要なインフラの一つです。
電子カルテや予約システムなど、気づかないうちに多くの業務がネットワークに依存する時代になっています。
多くの先生方のクリニックでは、主回線として光回線を導入し、デスクトップPCは有線、スマートフォンやiPadなどの端末は無線で接続しているケースが一般的だと思います。無線ルーターについても、1台構成で運用しているという施設がほとんどではないでしょうか。
今回、私はあるきっかけから、「2台目のルーターをバックアップとして用意する」という運用を始めてみました。大掛かりなネットワーク構築ではなく、あくまで開業医として現実的に取り入れやすい対策です。
こちらの経験を今回先生方に共有させていただこうと思います
光回線は命綱
現代のクリニック運営において、インターネット回線はほぼ命綱と言ってよい存在だと思います。
多くのクリニックで電子カルテが導入されており、特にクラウド型の場合、回線が不安定になると業務全体が一気に止まってしまいます。
最近開業したクリニックでは、初めからクラウド型電子カルテを採用しているケースも多く、そう考えると、光回線の安定性というのは、もはや「あると便利」ではなく、診療を成立させる前提条件になっていると感じます。
また、オンプレミス型の電子カルテを使用している場合であっても、診療中の調べ物や情報確認、各種クラウドサービスの利用など、インターネットを使う場面は日常的にあります。また予約システムについては、ネット環境がなければ事実上運用できません。
実際のところ、回線が止まってしまえば、診療の流れや院内業務に支障が出るクリニックの方が圧倒的に多いのではないでしょうか。
ルーターストップ問題
もしかするとご経験のある先生もいらっしゃるかもしれませんが、ルーターのトラブルによって突然インターネット回線が止まってしまうことは、決して珍しい話ではありません。
頻度としてはそこまで多いものではなく、数か月に一度あるかないかというレベルだと思います。ただ、一度止まってしまうとルーターの再起動が必要になり、その間は5分前後、診療や院内業務が完全に止まってしまうことになります。
忙しい時間帯の5分間というのは想像以上に重く、その間に何もできないという状況はかなりのストレスになります。予約が入っていても確認できず、状況を把握できないまま時間だけが過ぎていくというのは、現場ではなかなかつらいものです。
実際、当院でもルーターが原因で回線が止まる経験が何度かありました。開業当初に使っていたルーターは性能があまり高くなく、比較的頻繁にトラブルが起きていましたが、1万5000円程度の少し性能の良いルーターに変更してからは、発生頻度はかなり減りました。
とはいえ、どれだけ対策をしていても、忘れた頃に突然、光回線ごと止まって何も動かなくなるという事態は起こります。当院でも一応モバイルルーターをバックアップとして用意していますが、それでも切り替えや対応には数分を要します。回線が止まったときに、どう対応するのが現実的なのかという点について、改めて考えるようになりました。
防犯設備との連携で見えてきた問題
それでもこれまでは、多少のストレスを感じながらも、致命的な事態にはならず何とか運用できていました。ただ、少し前に、以前書いた防犯システムの記事とも関連する出来事があり、これはさすがに見過ごせないと感じることが起こりました。
防犯システムというのは、基本的にインターネット回線が常時安定して動いていることを前提に成り立っている仕組みです。ところが、外出先でたまたまルーターが止まってしまうと、遠隔からは何もできず、結局はクリニックに戻ってルーターを再起動するしか手段がなくなってしまいます。
自宅にいる場合であればまだ対応できますが、少し遠出をしている状況だと、すぐに戻ることもできず、「今どうなっているのか分からない」という状態になります。そのこと自体がかなりの不安材料になり、これまで以上に強いストレスを感じるようになりました。
この出来事をきっかけに、さすがに現状のままではいけないと感じ、何かしらの対策を本格的に考えなければならないと思うようになりました。
2台目のルーターを導入する
いろいろと自分なりに対策を考えた結果、これはシンプルに、クリニックにルーターをもう1台追加すればいいのではないか、という考えに至りました。1台はこれまで通りメインとして使用し、何か問題が起きたときのために、バックアップとして動くもう1台の、完全に独立したルーターを用意するという発想です。
2台目の回線があれば、そこに接続した遠隔操作可能なスマートコンセントを用意することで、1台目のルーターの電源をオフにして再起動する、という操作を外出先からでも行えるようになります。現地に戻らなくても最低限の復旧作業ができる、という点はかなり大きいと感じました。
この仕組みには、以前の記事でも触れたTapoのスマートコンセントを使用しています。この方法であれば、たとえ外出先でクリニックのメイン回線が落ちたとしても、建物全体の電源や回線設備そのものが完全に停止していない限り、バックアップ回線を使って復旧できる可能性が出てきます。
結果として、「回線が落ちたら何もできない」という状態から、「少なくとも自分で手を打てる余地がある」状態に変わったことが、精神的にも非常に大きな違いでした。
ポイント
ここで一つポイントとしてお伝えしておきたいのは、光回線をもう1本、別の会社から引く必要はないという点です。光回線自体は1本で十分で、その回線を「メイン用」と「サブ用」に分けて使う、という考え方になります。
具体的には、壁から出ている光回線の大元を、そのまま1台のルーターにつなぐのではなく、分岐用の機器を使って振り分ける形になります。この手の機器は市販されており、配線自体もそこまで複雑ではないため、実際にやってみると難しい作業ではありません。
言葉だけで説明するとやや分かりにくいので、実際に使った商品のリンクは以下に貼っておきます。ポイントは、壁から出ている回線の根本部分をこの分岐機器につなぎ、そこからメインのルーターとサブルーターへそれぞれ配線する、という構成です。(参考リンク→TP-Link 5ポート スイッチングハブ)具体的なやり方は検索するといくらでも出てくると思いますので、任意の方法で良いと思います。
クリニックによっては、オンライン資格確認用の回線も同じ大元から分けているケースがあると思いますが、その場合も考え方は同じです。できるだけ上流の段階で分岐することで、どれか一つが止まっても、他が完全に巻き込まれない構成にできます。
具体的な運用方法
平時の運用方法
普段の運用としては、これまで使っていたメインのルーターを通常通り使用しつつ、もう一つのサブルーターの回線も常に生かした状態にしています。もし1台目のルーターにトラブルが起きた場合でも、すぐに2台目のサブルーター側の回線で診療を継続できるような体制を取っています。
この構成にしておくことで、仮にメインのルーターが落ちたとしても、その瞬間に診療が完全に止まってしまうという事態は避けられます。ひとまずはサブ回線に切り替えて診療を継続しておき、空き時間や落ち着いたタイミングで、ゆっくりメイン側の復旧作業ができるという点は、実務的にはかなり大きなメリットだと感じています。
外出時の対策
外出時の対策については少しややこしいのですが、ポイントは、Tapoのような電源をオンオフできるスマートコンセントを、2台目のサブルーターのネットワークに接続しておき、そのスマートコンセントに1台目のルーターの電源を挟み込んでおくという点です。
この構成にしておくことで、1台目のルーターが何らかの理由で落ちてしまった場合でも、2台目の回線を使ってスマートコンセントにアクセスし、遠隔で電源のオフ・オン操作を行うことができます。結果として、現地に戻らなくてもルーターの再起動を試みることができ、復旧できる可能性が高まります。
もちろん、大元の光回線自体が落ちてしまった場合には、この方法も使えなくなりますが、実際のトラブルの多くはルーター側の問題であることが多く、この構成でかなりのケースをカバーできると感じています。本当に光回線そのものが停止した場合には、バックアップとして用意しているモバイルルーターを使って院内で対応する、という運用になります。この点については、外出先からの遠隔対応は難しいため、割り切りが必要だと思っています。
