開業してからしばらくは、一日の患者さんの数が気になるものです。ある日はすごく忙しくて喜んでいたら、次の日には閑古鳥が泣いて、不安になるということもあります。今回は一日患者数のテーマで考えていこうと思います。

患者さん一人の重さ

勤務医時代は、患者さんが多くて困ることはあっても、少なくて困ることはなかったと思います。むしろ雨などで患者さんが減る日は、私はゆっくり外来ができて気分的にはむしろ楽でした。しかし開業後は、患者さんの数が利益に直結するため、かなりシビアにみていく必要があります。

仮に患者さん一人あたりの平均単価を5000円として、年間の稼働日数を250日と仮定します。そうすると、一日の患者さん一人あたりの影響が見えてきます。仮に患者さんが一日平均1人増えたとすると、5000円×250日 で年間125万円の増収になります。これはかなり大きいです。しかし逆に、患者さんが平均1人減った場合は、マイナス125万円となってしまいます。このように考えるとかなりのインパクトがあります。

患者さん一人を増やすのは非常に難しい

開業して痛感しましたが、患者さんを増やすというのは非常に難しいです。一日あと一人増えてくれればと思うこともありますが、これが如何に難しいことかと、日々痛感しています。そもそもクリニックは増える一方で、人口は減って、受診者は減っていますから、医療機関同士でも患者さんの取り合いとなっています。今後もより状況は厳しくなる可能性が高く、診療所を取り巻く環境は非常に難しいものがあります。

あと一人が、利益に影響を与える

たった一人と思われる先生もいらっしゃるかもしれませんが、今より患者さんが増えることは、利益という観点では決定的な影響を与えます。たとえば、一日患者数が40人のクリニックが、41人に増えた場合、経費も労力もほとんど変わりません。しかし上記のように、収益は125万円増加します。この場合、増えた分は純粋に先生の利益になります(税金はかかりますが)。先生の懐に入る利益は、たった一人患者さんが増えただけで、年間100万円単位で異なってくる可能性があるわけです。経費や労力が変わらない状況で、売上が増えることは、経営にはものすごい影響を与えます。

診療日や時間を増やせばいいものでもない。

しかし患者数を増やそうとして、単純に診療日や時間を増やせばいいものではないところが、経営の難しいところです。診療日や診療時間を延長すれば、その分人件費も増えます。ワンオペなら人件費はかかりませんが、それでも先生の労力は削られます。

また診療時間を伸ばしても患者さんが増えるわけではないことは、実際にやってみて学びました。患者さんの中には、最終枠でとる方が一定数みえます。このような患者さんは、たとえ診療時間を1時間伸ばしても、最終枠に予約を入れる可能性が高いです。たとえば18時→19時に診療時間を伸ばしても、もともと18時最後にいらっしゃる患者さんが19時に移るだけで、実際は変わらなかったということも起こります。これなら先生の労力や経費を考えれば、早く仕事を切り上げた方がいいわけです。

シュミレーションは取らぬ狸の皮算用になりかねない。

コンサルタントに依頼している場合は、1年目は〇〇人、2年目は〇〇人、、、のように開業後の一日患者数をシミュレートしてくれると思います。△年目には損益分岐点を超え、▢年目には、先生の年収は勤務医時代を大きく超え、◯年目には借入金を返済し、、、などという、夢や希望に満ちた計画を持ってきてくれるでしょう。しかし、少なくとも右肩上がりに順調にうまくいくクリニックの方が少ないと思います。コンサルタントはある意味、先生が開業に成功するという夢を売るのも仕事ですから、話は半分できくのが良いと思います。