保険診療においては、特定の検査や、治療を行った場合、病名やカルテ記載だけでなく、症状詳記や、摘要欄に追加で記載する必要があるものがあります。これらは数を上げればきりがないので、個々の詳細は保険医協会発行の「保険診療の手引」や、厚生労働省が発布している「医科診療報酬点数表に関する事項」をご参照いただくとして、今回は実際に私がよく遭遇する、COVID-19について、ご紹介していこうと思います。

抗原検査について

COVID-19の検査では、以前は1回目でも検査が必要と判断した根拠を記載する必要がありましたが、その後、初回は疑い病名だけで通るようになりました。しかしCOVID-19の初回検査で陰性だった場合、発熱が継続したり、咳嗽が悪化するなどで、初回検査が偽陰性である可能性を疑い、再検査を行う場合は、再検査が必要と判断した医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載する必要があります。以下にその部分を引用します。

(22) SARS-CoV-2抗原定性 ア 「28」のSARS-CoV-2抗原定性は、 COVID-19(新型コロナウイルス感染症を いう。 以下同じ。 )が疑われる患者に対して、 COVID-19 の診断を目的として実施した場 合に1回に限り算定する。

ただし、本検査の結果が陰性であったものの、 COVID-19 以外の診断がつかない場合は、さらに1回に限り算定できる。 この場合において、 本検査が必要と判断した医学的根拠を診療報酬明細書の摘要欄に記載すること。

このようになっているため、2回目の検査時は、再検査が必要な医学的根拠を記載する必要があります。この場合は、疑い病名だけでは、まず査定されるので、必ずコメントが必要です。正確には、「摘要欄」に記載となっていますが、私は、「症状詳記」に経過を含めてまとめて記載してしまうことも多いのですが、特にコメントの場所で問題になったことはないので、書いてあれば良いのかもしれません。

具体的に、COVID-19での、私の記載例をお示しします。

「令和◯年◯月◯日、発熱にて受診。COVID-19を疑い、抗原検査を行うも陰性。その後も発熱が継続し、咳嗽もひどくなってきたため、令和◯年◯月△日再診。
状況から、COVID-19を強く疑うため、再検査での評価が必要と判断し施行した。」

行政に提出する書類のため、念の為、年は和暦で記載しています。症状経過は、上記が一例ですが、コピペではなく、患者さんによって実際の経過を記載します。

病名について

また病名については、たとえば、初診日が10月1日の場合で、初回検査が陰性の場合、
COVID-19疑い 開始日:10月1日  転帰日:10月1日  転機:中止
と記載します。

以下では、
・再検査でも陰性だった場合、
・再検査では陽性となった場合 
について場合分けして、記載方法を考えてみます。

再検査でも陰性だった場合、

そして、再診日が10月3日の場合は、新たに病名をつけます。再検査でも陰性であれば、
COVID-19疑い 開始日:10月3日  転帰日:10月3日  転機:中止
とあらためて記載します。

このケースでは、
COVID-19疑い 開始日:10月1日  転帰日:10月3日  転機:中止
とまとめてしまっても良いように思っていたのですが、新規個別指導にて、上記のように、その都度で正確に記載するように、指導されました。

そのため、レセプトには、
COVID-19疑い 開始日:10月1日  転帰日:10月1日  転機:中止
COVID-19疑い 開始日:10月3日  転帰日:10月3日  転機:中止
と2行にわたって記載することになります。

やや面倒ですが、たしかにここまで、正確に記載し、症状詳記や摘要欄への記載も併用すれば、誰がどうみても、明白であり、ケチをつけようがありません。万全を期すにはここまでやったほうが良いと思います。

再検査で陽性となった場合

また今回のケースで、2回目で陽性になった場合は、レセプトには、
COVID-19疑い 開始日:10月1日  転帰日:10月1日  転機:中止
COVID-19   開始日:10月3日  転帰日:10月17日   転機:治癒
と記載することになります。

転機日はその後、再診がなければ、推定するしかないので、一般的に治癒すると考えられる日で記載するのが実務上の処理であると思います。

またこの場合も、
COVID-19   開始日:10月1日  転帰日:10月17日 転機:治癒
とまとめてしまうと、査定されるリスクがあります。コメントが別にあったとしても、一度陰性になったことが、病名からは読み取れないためです。