オンライン資格確認システムは、今やほとんどの医療機関で日常的に利用されています。普段は当たり前のように動作しているため、いざトラブルが起きると「何から手をつければいいのか分からない」という場面も少なくありません。私のクリニックでも、ある朝突然オンライン資格確認が動かなくなるという事態がありました。原因は「回線認証の切断」でしたが、復旧までの過程はなかなか骨が折れました。今回はその経験をもとに、同じようなトラブルに直面した際の対応の流れを共有したいと思います。
突然、オンライン資格確認が使えなくなる
ある日、いつも通り診療の準備を進めていたところ、オンライン資格確認端末がエラーを表示しました。時々発生する軽微な不具合かと思い、パソコンや端末の再起動を何度か試みましたが、何をしても改善せず、完全に機能が止まってしまいました。これまでにも小さな不具合はありましたが、ここまで動かないのは初めてで、資格確認がまったくできない状態になりました。バックアップとして用意していたiPhoneのマイナ資格確認アプリも同様にエラーを出し、さすがにこれはおかしいと感じました。(参考記事→オンライン資格確認の代替手段について)
電子カルテ業者への問い合わせから、国のシステム窓口へ
まず電子カルテのベンダーに連絡し、ネットワークや設定面の確認を依頼しました。ところが通信には問題がなく、端末も正常という結果。最終的に「国のオンライン資格確認システムの担当窓口に問い合わせてください」と案内されました。そこからが少し大変で、担当者がなかなかつかまらず、いくつかの部署を経由しながら状況を説明するも、原因が特定できないまま時間だけが過ぎていきました。
ようやくプログラム部門の担当者とつながり、詳細を確認したところ、原因は「回線認証接続が切断されていたこと」でした。指示を受けて再接続の操作を行ったところ、すぐに復旧。つまり、医療機関と国のシステムをつなぐ認証ルートが、何らかの理由で途切れていたのです。
診療への影響と、想定されるリスク
このトラブルの影響で、午前中の診療が約1時間半ほど滞りました。幸い、当日は再診の患者さんが中心で、マイナンバーカードしか持っていない初診の方はいらっしゃらなかったため、大きな混乱は避けられました。しかし、もし資格確認ができなければ診療そのものが進まない場面もありうるわけで、改めてこのシステムへの依存度の高さを感じました。
オンライン資格確認は非常に便利な仕組みですが、従来の保険証運用では起こりえなかったタイプのトラブルが発生します。多くの場合は再起動で解決しますが、今回のように上位回線の認証が切断されると、医療機関側でできることは限られます。担当者の話によれば、トラブルの中でも「回線認証接続の問題」が最も多いものの、その原因は明確には分かっていないとのことでした。 つまり、認証を再接続すれば復旧する場合が多いということです。今後も一定の頻度で発生しうる現象として、備えておく必要があると感じました。
実際に行った再接続の手順
今回のケースでは、オンライン資格確認用のパソコンからマイクロソフトエッジで次のURLにアクセスしました。
アクセスすると、
「東日本電信電話株式会社(以下『当社』)よりお客様ID(CAF/COPから始まる文字列)を回線情報通知機能の契約事業者に通知することを希望しますか?」
というメッセージが表示されます。
ここで「希望する」を選択すると、国のシステムとの認証が再確立され、資格確認が再び使用可能になりました。要するに、国との認証ルートが再接続されたということです。
電子処方箋も同時に停止する点に注意
資格確認が止まると、電子処方箋のシステムも同時に機能しなくなります。両者は同じ回線を利用しているため、どちらかが停止すればもう一方も自動的に止まってしまう仕組みです。今回は紙の処方箋で対応できたため診療を継続できましたが、もしオンライン診療を中心に行っている医療機関で、電子処方箋を主軸として運用していた場合には、相当な影響が出ていたはずです。
また、こうしたトラブルが発生しても、24時間対応の窓口が用意されているわけではなく、平日の朝などは電話が集中してなかなかつながらないという現実もあります。システムとしてはまだ発展途上であり、現場が試行錯誤しながら慣れていく時期なのかもしれません。ただ、医療機関側でできることには限界があります。端末や回線を整備しても、国側の認証基盤が不安定であれば、どうしても現場では対応しきれません。
その意味で、いざというときに「別経路での資格確認」や「紙での処方対応」といった最低限の代替ルートを確保しておくことは、現場としての責務と言えるでしょう。しかし同時に、こうしたトラブルが頻発する状況を前提とせずに済むよう、国やシステム提供側にも、もう一段階踏み込んだ安定化対策を講じてもらいたいと感じます。現場の混乱を防ぐためには、個々の医療機関の努力だけでなく、制度全体としての信頼性を高める取り組みが必要かと思います。
