オンライン資格確認システムが標準化されつつある中で、実際の現場では「マイナンバーカードしか持っていない患者さん」に出会うことが増えています。マイナンバーカードだけという場合、端末がトラブルを起こした際に非常に困ることがあります。慎重な方の中には、あらかじめ資格情報を写真やファイルに保存している方もいますが、そうした準備がないケースでは、万一のときに「何もわからない」状態に陥ってしまう可能性があるのです。

もちろん、今後はこのあたりの仕組みも徐々に改善されていくと思いますが、現時点では本当にどうにもならない場面が、ごく稀とはいえ存在します。特に問題となるのは、完全初診の患者さんで、患者さんのマイナンバーカード自体には何の不具合もないにもかかわらず、医療機関側の端末やカードリーダーの調子が悪く、読み取れないケースです。オンライン資格確認のパソコンは常時起動状態にあることが多く、安定性の面で不安が残ります。機械である以上、いつトラブルが起きるかは分からないものです。

そうした中で、いざというときに使える「緊急用の手段」を持っておくことは、医療機関側にとっても大きな安心材料になります。その一つとして私が最近知ったのが、iPhoneで使える「マイナ資格確認アプリ」です。これはパソコンとは独立して動作するもので、iPhoneが1台あれば資格確認が可能になります。訪問診療のように院外でカードリーダーが使えないケースや、発熱外来など動線が異なる場所で資格確認が必要な場合を想定して作られたようです。

実際に試してみたところ、あまり評判は芳しくないものの、万一カードリーダーがトラブルを起こした際にも十分代替として機能しました。最悪、何も手段がなくなってしまうという状況を避けられる点で、非常に心強いと感じます。私自身も当初はこのアプリの存在を知らず、導入された際も国から目立ったアナウンスがなかったのですが、使ってみて「これは備えておく価値がある」と実感しました。iPhoneを1台用意するだけで運用できるため、多くの先生方におすすめできます。なお、おそらくAndroid端末でも同様のアプリが提供されていると思われます。

このアプリはApp Storeからダウンロード可能です。導入の際は少し戸惑うかもしれません。オンライン資格確認端末を導入した際に渡される「アカウント一覧表」の中から「医療情報閲覧アカウント」を使用して設定するのですが、業者によって仕様が異なる場合があります。また、メイン端末側から「アクティベーションコード」を発行する必要があり、これは管理者アカウントでログインしないと実行できません。正直かなり手順がややこしく面倒でした。

もし手順がわかりづらい場合は、「医療機関向け総合ポータルサイト」に問い合わせるのが確実です。こちらはオンライン資格確認や電子処方箋、医療DX全般を扱う公式サイトで、バージョンや環境に応じた対応方法を案内してもらえます。電子カルテのベンダーごとに操作が異なる場合もあるため、正直、電話で聞いてしまうのが一番早いと思います。導入時に受け取った「IDが記載された書類」などを手元に用意しておくとスムーズです。

このアプリの大きな利点は、院内ネットワークが一時的に切断された場合でも、スマートフォンの4G回線を使って資格確認ができる点です。通信経路を院内LANに依存しないため、緊急時のバックアップとして非常に有効です。ただし一点注意が必要で、医療機関と国の認証(回線認証接続)が何らかの理由で切れてしまうと、このアプリも使用できなくなります。この点については別の記事で詳しく触れたいと思います。(参考記事→オンライン資格確認が突然使えなくなったときに   回線認証の切断とその対処法