新規開業をする先生の場合、ほとんどのケースで電子カルテを検討すると思います。マイナンバーの保険証化を含め、医療業界にもデジタル化の波がやってきました。電子カルテをうまく使うと診療の効率は非常に上がります。今回は当院での電子カルテ導入の経緯や、実際の運用についてお伝えします。
エムスリー社のM3 DigiKarを使用
当院はM3 DigiKar(以下デジカル)を使用しています。医師にはおなじみのM3が作っている会社です。ちなみにM3はあまり知られていませんが、ソニーの関連会社です。ソニーがバックにいるのは心強いです。
導入の経緯は、率直に言ってコストが一番安いということでした。カルテは電子カルテと決めており、もうひとつ、「きりん」という電子カルテもコストが抑えられるので検討しましたが、実際にデモで使用してみて、デジカルの方が軽くて、サクサク動き、会計との連携も早かったのと、当時は業界最安値だった(と思われる)こともあり、導入を決めました。
実際に使用してみて、動きは非常に軽いです。自動算定も一瞬です。また何台同時に使用しても問題なく、クラウド型なのでクリニック以外の場所でもカルテをみれるので非常に便利です。また同社が売り出しているデジスマ診療という予約ソフトも使いやすく、もちろんデジカルとの相性も抜群です。デジカル+デジスマで診療の効率は凄まじくアップします。問診の反映も一瞬でできます。患者さんがクレジットカードを事前にデジスマに登録している場合は、会計も不要なので待ち時間も軽減され、患者さんからもご好評いただいています。
もちろんデメリットもあります。導入はサポートも受けられますがコストがかかるので、私は自力で行いました。もちろん専門的な知識などは不要ですが、ある程度パソコンが使えないと厳しいかもしれません。また全体的な見やすさや細かい機能は、他社カルテに劣るところは当然あります。個人的にはセットの修正ができず、修正したい場合は改めて作り直さなければならない点や、処置・行為の並び替えができないところに不便を感じています。
しかし全般的にみれば大変満足しており、他社に乗り換える気が全くおこらないほどです。ミニマム形態開業の電子カルテ・予約システムとしては、デジカル+デジスマは、最適解のひとつだと思います。またアップデートも頻繁にあり、どんどんシステムは使いやすくなっています。個人的には病名がセットに組めないことが最初大きなネックだと感じていましたが、アップデートによりこれが可能になりました。これにより、薬の処方と病名をセット登録が可能になり、病名漏れリスクが軽減され、カルテ入力の速さが向上しました。
導入前には実際に触ってみるのがよいです。
電子カルテは先生との相性もありますし、クリニックの運用形態や診療科によっても必要な機能が違うので、実際にデモで使用してみるのがよいです。最終的には先生の使いやすさを最優先にして、あとはコストや機能でみていくのが良いと思います。使い勝手がわるい、相性が合わないカルテを使い続けるのは結構ストレスになる可能性が高いです。慎重に判断してください。
また電子カルテを一斉に体験できるイベントもありますが、営業の方も熱心かと思いますので、先生のお気持ちを最優先にしてください。
抱き合わせ商品には注意
電子カルテには、薬品卸さんが紹介してくれるものや、検査会社が作成したり、関わっている商品もあります。特に先生が気に入れば問題ないですが、安易に決めてしまうのはもったいないです。導入すれば、検査費用の値引きなどをご提案頂いても、最終的なコストが高くついてしまうケースもあります。先生の直感や気にいるかどうかを最優先にしてください。
電子カルテ途中で替えるのは、なかなか大変
もちろん開業して実際に使って見る中で買い替えたいと先生が思えば、替えることは可能ですが、結構面倒です。データの移行などは、もちろん乗り換え先の会社が相談に乗ってくれますが、コストがかかります。また新しいカルテになれるのに、先生もスタッフも一定時間がかかります。可能なら最初から最適なカルテを選びたいです。少なくともデモで実際に触ってみることで、こんなはずではなかった!という大外れを引く可能性は避けられます。
電子カルテ選びのポイント
私なりのポイントですが、もし迷ったら、
・潰れたり、撤退する可能性が低い大手
・クラウド型
・最終的には先生の直感
で選ぶとよいと思います。電子カルテを提供する会社は多くありますが、規模によっては、先生が使い続けたくても会社の方の都合でサービスを停止する可能性も否定できません。迷ったらそのような可能性が低い大手企業のほうが安全であると思います
またサーバーを院内に設置するのはスペースや電気代もかかります。場所代や光熱費は隠れたコストです。近年は光熱費も高騰しています。今の流れから言えば、もちろんサイバーセキュリティ対策をとる必要はありますが、クラウド型がよいと思います。もちろんコストも抑えられます。
しかし最終的には先生の直感が大事だと思います。私もコストなど色々な要素は考慮しつつも、最終的には直感でなんとなく良いと思って選びました。