クリニック開業は、自力で行うケースもありますが、開業コンサルタントに依頼するケースも多いと思います。しかしコンサルさん選びに失敗して、開業に開業に失敗する、金銭的に苦労する先生も少なくありません。開業コンサルタントも商売ですから、儲からなければ先生の開業支援をする理由は無いわけです。開業コンサルタントには様々なバックボーンの業種や、正直色々な方がいますが、どんなケースでもその人の利益構造に注目すると、色々なことが見えてきます。今回は開業コンサルタントの利益構造について考えて行こうと思います。
開業コンサルタントとは
開業コンサルタントは、様々なバックボーンをもつ人が名乗っている職業です。一口に開業コンサルタントと言っても本業は、税理士、不動産関係、製薬会社、医療機器メーカー、建築士、など様々です。開業の届け出などは、ある程度の経験があれば誰がやっても大差はないでしょうが、本業によって得手不得手はあります。たとえば本業が建築士の開業コンサルタントであれば、内装には強いですが、税金の知識は税理士が本業のコンサルタントには敵いません。どれが良いというより、それぞれに強み、弱みがあると考えた方がよいでしょう。
中には専業の開業コンサルタントもおりますが、数としては多くない印象です。何かしらの本業がある方の方が多いと思います。
開業コンサルタントに頼むと開業はスムーズ
開業コンサルタントはクリニック開業には慣れていますから、書類の届け出などは全て代行してくれます。自力で行おうとすると、全て初めてなので、一から勉強しなければならず結構骨の折れる作業です。行政の届出については、何か一つでも抜け落ちると、面倒なことになります。コンサルタントに依頼した場合、慣れているのでまずそのようなことはありません。また開業は基本的に一度きりの場合が多いと思いますので、開業の書類について出来るようになっても何か先生にメリットがあるとは考えにくいです。正直依頼した方が楽だと思います。
私はコンサルさんを通さずに、自力で行いましたが、保健所や厚生局への届出はもちろん、併行して、内装の相見積もりから選定、機器選定の交渉、借入金の書類作り、金融機関との打ち合わせ、業者との交渉など、全て自分で行わなければならず、正直かなり大変でした。身体がとても一つでは足りないと思ったほどです。しかも遠方の落下傘開業で、直前まで病院勤めをしながら開業準備をしましたから、今考えてもよく乗り切れたと思います。
開業コンサルタントは、先生が開業することで利益になる
開業コンサルタントはなぜ先生の開業を支援してくれるのかといえば、それは簡単な話で先生が開業するとお金が儲かるからです。面倒な事務仕事など代行してくれますが、内装、機器の購入、薬剤の仕入れ、検査費用、、、お金が絡むところで必ず費用を徴収されると思った方が良いです。クリニックの開業には、数千万円から数億円の大きなお金が動きます。その10%でも手数料で抜けば、大きな利益になります。しかも経費はほとんどかかりません。これほど美味しい商売もないでしょう。そのため多くの人が、先生の開業を支援したがります。
開業時に抜くか、開業後に抜くか
開業コンサルタントが利益を得るタイミングは、①開業準備の時期と②開業後の2パターンに分かれます。ここでは場合分けしてそれぞれで考えてみようと思います
①開業準備の時期
クリニック開業では開業準備の時期に最も大きなお金が動きます。そのため開業コンサルタントもこの時期が最も収益を得る重要な時期です。万が一、先生が開業をする気がなくなってしまっては商売になりませんから、先生に対しても非常に親切に、手厚く対応してくれます。開業コンサルタントが先生に一番気を遣う時期で、コンサルタントにとっては、最も重要な時期でしょう。
この時期に大きなお金が動くため、この時だけを狙って仲介したい業者もおります。開業コンサルタントによっては、先生に大きなお金が動くように重装開業へ誘導し、開業後のことは知らないという、「開業させ屋」のようなスタンスの業者もいるようです。このような業者さんは避けたいです。
②開業後
開業コンサルタントの業種にもよっては、開業後にも収益を得るケースも有ります。もっとも典型的なのは薬局関連の会社が先生のクリニックの近くに薬局を作るケースです。自社の門前薬局とセットで先生の開業をサポートする場合は、先生が患者さんをみて、処方箋を発行するほど、その薬局さんも潤い、結果的に開業コンサルタントも収益を得ることになります。
このケースでは利益を得る構造上、開業後に先生のクリニックが流行らなければ、収益を得られないため困ってしまいます。そのため、開業させてあとは知らない、ということにはなりにくく、開業場所の選定や戦略も、勝算があるプランで用意してくれる可能性が高いです。
しかしこのパターンの場合、先生はリスクを負って独立開業したにもかかわらず、不自由さが伴うことになります。門前薬局の経営もある以上、先生の好き勝手に休んだり、営業時間を変えたりすることは難しくなります。リスクを負って独立開業するメリットの一つは、誰にも指図されずに全て好きに決められることですが、このメリットが大きく損なわれてしまいます。
また門前薬局の場合、薬品卸業者が関わりますが、各種仕入れもこちらからすることになります。今はオンラインショップで、備品も薬品も安く仕入れることができる時代です。しかし付き合いがある手前、他で仕入れるということは出来ないと思います。結果的に開業後のコストが、恒久的にかさんでしまうリスクをはらんでいます。
高額なお金が動きほど嬉しい
開業コンサルタントとしては、その利益構造上、大きなお金が動く開業の方が嬉しいわけです。理由は簡単で、その分利益を得る可能性が上がるからです。例えば、開業費1億円のクリニックを斡旋した場合、仕入れ等で10%のお金を抜けば、それだけで1000万円の利益になります。一方で開業費1000万円のクリニックの場合は、同条件では100万円にしかなりません。開業費が大きいからと言って、クリニック開業に関する、事務手続きや手間は大きく変わることはありません。それならば大きな利益を得られる方が好まれるのは当然でしょう。
しかもコンサルタントの業務というのは、経費がほぼかからず、リスクも自分が負うわけではありません。機器選定も業者から、先生へ、右から左に流すだけで、実際にお金を払うのは先生です。それだけで数十万円、数百万円ものお金が入ってくるので、リスクも低く、その利益率はとんでもないことになります。
ミニマム開業は相手にされないかも
大きなお金が動く方が儲かる利益構造上、ミニマム開業ではコンサルタントに相手にされない可能性があります。検査機器を入れず、電子カルテと診察机だけで、事務所の居抜きで開業するようなケースでは、利益を得る場面がほとんど存在しないためです。煩雑な事務手続きだけを、喜んでやってくれる親切な業者は存在しません。このようなケースでは、自力で行うか、有償で依頼するのが現実的であると思います。
ただより高いものはない
開業コンサルタントに開業を支援してもらう場合、必ず先生がどこかで負担することになります。開業コンサルタントの中には、無料での開業支援を謳っているケースもありますが、タダで先生の開業を支援してくれるような業者さんは、この世に存在しません。見えない形で必ず先生が負担することになります。このことは是非頭の隅において欲しいと思います。
開業に失敗した先生、開業後に思うように行かない先生の中には、開業コンサルタント選びの段階で失敗しているケースもあります。開業に失敗するというのは、極論すればお金の問題です。そのような先生は、開業時には高額の機器を勧められるままに導入してお金を抜かれ、開業後も様々な場面でお金を吸い取られ続けています。これで成功するのはほぼ不可能という状況の先生もいます。
参考ですが、ある専業コンサルタントの場合、保険診療クリニックのコンサルタント料は300万円〜となっていました。有償依頼ではこのレベルのお金がかかるということです。無料というのはあり得ないことがお分かり頂けると思います。ミニマム開業でこれが高いと思われる先生は、自力で行うのも現実的だと思います。実際やってやれないことはありません。ある程度の規模で行う先生の場合は、流石に一人では困難であると思いますので、有償でも信頼できるコンサルタントに依頼するのは現実的であると思います。