先生は事務スタッフさんに、どこまでのお仕事をお願いしようとお考えでしょうか?私は事務スタッフを雇用する際に本当に色々考えました。その結果、スタッフさんにお願いする仕事は、可能な限り簡略化し、複雑なことや、例外的なことは私が代行することで、例えば入職したその日でも、ある程度こなせるような内容に絞ることにしました。当院での事務スタッフのお仕事や考え方についてご紹介します。

可能な限り簡略化する

私が事務スタッフさんに依頼していることは、
・受付にて患者さんのご対応
・保険資格の確認、電子カルテへの入力
・患者さんへの自動精算機のご案内
主にこの3つがメインです。他には始業時に軽い院内清掃や、宅急便が来たときの受取を対応してもらうなどです。
当院では、レセプト業務は一切なく、また苦手な方も多い電話対応もありません。始業前のミーティングもなしです。診療開始時間に来ていただければ大丈夫とお話しています。

もちろん電子カルテの操作など、少し覚えることはありますが、かなり限られた操作であり、ほとんどの人が初日から対応できるような業務であると思います。専門的な知識なども一切不要です。日本語が話せて、文字が読めて、パソコンを多少いじった経験があればできると思います。

最悪ひとりでもすべてできるようにしている

私が意識したのは、最悪私が一人でもクリニックを回せるようなシステムにすることです。たとえば私がレセプトが全くわからなければ、少なくとも一人レセプトに詳しい事務スタッフがいなければクリニックを開けることもできません。その方がたまたま体調不良でお休みになったり、万が一、退職する事になったら、クリニックを運営することができなくなり、致命傷になります。

本来は医者は関係ない業務を行うことは効率が悪く、一般的な経営ではご法度であると思います。開業医の院長先生も、事務仕事はスタッフに権限委譲するのが一般的であり、ご自身ではよくわからないという先生もいらっしゃると思います、というかそれが普通です。

ある程度の規模感の場合、先生は診療に集中した方が絶対に効率が良いです。それは私もそう思います。しかしスタッフが限られるミニマムな環境では、先生が完璧でなくても、一連の業務にある程度精通していなければ、万が一、その業務を担当するスタッフが勤務できない状況になった場合、診療が出来なくなってしまいます。いわば生殺与奪の権を他人に握らせる状況になってしまいます。

スタッフに余力を残す

私のクリニックでは、あえてスタッフの業務に余裕をもたせるようにしています。人を雇う立場になると、どうしても、時間内はできる限りの仕事をしてもらいたい、時給分は目一杯働いて欲しいと思ってしまいがちです。しかし余裕は大事だと思います。ギチギチの業務にすると、スタッフは疲弊してしまいます。

予約が空いて患者さんがみえない時間は、私はスタッフに好きなように過ごして頂いて良いとお話しています。時間が空いたらもったいないからと、他の業務を頼むことはしません。本を読んでも、勉強しても、スマホで遊んでいても、受付で店番をしてもらいながら出来ることで、常識的な範囲であれば自由にして頂くようにお伝えしています。

マニュアル化を徹底し、例外的なことは私が対応

電子カルテ入力の方法から、患者さんがいらっしゃったときの挨拶、対応まで、「」つきのセリフまで書いて、マニュアル化を徹底しました。そしてマニュアルも可能な限り薄く、簡略化し、例外はきりがないので、困った時は全て私が対応するので、いつでも聞いて欲しいとお願いしました。また慣れてきたら、業務に支障がない範囲でやりやすいようにアレンジしてもよいとしています。

目標はファストフード店のようにその日からできる職場

有名ファストフード店では、マニュアルが非常によく作り込まれており、アルバイトに入ったその日から、ある程度の仕事がこなせるようになるそうです。もちろん大手企業にはとても敵わないものの、私もそれを目標に、可能な限り簡単に、わかりやすく、誰でもある程度、一日で習得できるような仕事ができるように心がけています。

デジタルをフル活用する

人間は情報を正確に入力することが苦手です。単純作業には必ずミスがでます。私ももちろんミスをします。なので、可能な限り、人間の手が入る場面を削減し、可能な限り、デジタル・機械の力を借りるようにしています。

たとえば、お金については、自動精算機を用いる限り、ミスが生じる可能性は限りなく小さくできます。また患者さんに予約をお取り頂くことにより、予約の瞬間に、電子カルテに自動でカルテが作成されるシステムになっているため、こちらで患者さんのカルテを手入力で作成することによる入力ミスは起こりえません。

保険証の入力など、どうしても手入力が必要な場面では、オンライン資格確認システムを活用し、確認を必ず行っています。これにより単純な数字の入力ミスが生じても必ず気がつきます。

ミスが起こり得る状況を可能な限り避けること、ミスが起こり得る状況では、単純ミスはかならず一定の確率で起こるという前提の上で対策を講じることで、単純ミスはゼロではないものの、かなり削減できています。このようなシステムを確立することで、スタッフのストレスも減り、より重要な業務にリソースを割くことが出来ると感じています。

ホームページで求める人物像をあらかじめ提示する

採用をどのようにしたかは、論点がややずれるので、また別記事に書こうと思いますが、私はクリニックのホームページ上と、ハローワークで募集を行いました。募集の際は、行う業務の範囲や、私の考え方、求める人物や能力などを、可能な限り詳しく記載しました。応募される方にとって都合の悪いこともあえて記載しました。せっかく面接に応募してもらっても、情報の伝達不足でミスマッチとなってしまうと、お互いに時間がもったいないためです。