今回はクリニックにかかる経費についての記事です。以前クリニックの固定費用は可能な限り下げるという内容の記事を投稿しました。固定費を下げることと同様に、いま現在、固定費がリアルタイムで、どこにいくらかかっているかを把握することも重要です。固定費削減は固定費の把握から始まります。
当院における固定費の管理についてご紹介します。
スプレッドシートでリアルタイムで把握する
そもそも固定費が毎月、毎年いくらかかっているかを正確に把握しているクリニック経営者は少数かもしれません。クリニックに限らず、個人事業を営んでいるオーナーさんも、だいたいの金額は把握していても、正確に計算している方はわずかだと思います。エクセルなどに書き出して、まとめている方はまだよい方ですが、それも毎日チェックするような方は稀で、いつの間にか古いデータになっているケースが多いように思います。
かく言う私もそうでした。表計算ソフトに固定費を書き出して、開院当初は更新していましたが、他の仕事が忙しくなるにつれて忘れていました。正直収益がよい時期はどんぶり勘定でも問題ありませんが、クリニックの経営がうまく行かない時期になると、そういえばと思い出しました。
デスクトップにフォルダを置いても、正直毎日は開きませんし、そもそもフォルダを開けるワンクリックが重いのです。それなら、毎日自動的にみられるようなシステムにした方がよいと考えました。当院はM3 DigiKarなので、クリニックでは毎日Google Chromeを使用します。これに目をつけました。Googleにはスプレッドシートという表計算ソフトが無料で使用できます。これをGoogle Chromeを立ち上げるたびに、自動的に固定費を計算したシートを開くように設定しました。これで特にやろうと思わなくても、毎日コストを意識することできます。意識しなくとも、自動的に開くようにして、目にするようにするのがコツです。
習慣にしたいことは、行動の敷居を下げる
少し話はズレますが、これは、『複利で伸びる1つの習慣』という本の考え方を参考にしています。本の中で、習慣にしたいことは、行動の敷居を下げるという項目があります。エクセルにまとめるのは、良い方法ですが、デスクトップにおいていても、ワンクリックの手間が生じます。しかし上記のように、毎日使用するGoogle Chromeを起動すると同時に立ち上がるようにしておけば、何も考えなくても、スプレッドシートが目に入ります。立ち上がると案外チェックするものです。意識して固定費をチェックをするぞ!と構えずとも、習慣として、確認、把握することができます。
ちなみに、こちらの記事を書くのも、同じく敷居をさげるために、Google Chromeの起動時にドキュメントが立ち上がるようになっています。そうするとカルテ記載の空いた時間など、診療のスキマ時間を使って、記事を書くことができます。本当に数分の時間の積み重ねですが、これが馬鹿にならないもので、記事作成のスピードが明らかに上がりました。案外、診療後に時間を作って書くより、効率よく書けることもあり不思議なものです。
スプレッドシートでの固定費把握方法
固定費の把握には、上記のように、スプレッドシートを使って、Google Chrome起動時に立ち上がる設定にしておくことがオススメです。固定費については、月額でかかるものと、年額でかかるものに分けて記載し、1年総額でかかる費用を合計します。運用していくと、結構変わるものもあるので、変わったものは、リアルタイムで最新の数字に変更していきます。
1年の総額を12で割り、月あたりの固定費を割り出します。ここまでは普通ですが、私は診療一日当たりの固定費を計算しています。そのためには、毎年始めに、その1年での合計診療日数を割り出す必要があります。これはいくつか方法がありますが、下の写真のように、日付とチェックボックスを使うと便利です。

診療する日にチェックボックスをつけます。多くの場合、診療曜日は決まっていると思いますので、一週間単位で繰り返せば一瞬で入力できます。またチェックしたボックスのみを数えるには、countif という関数を使えば簡単です。
固定費の解釈
例えば年間の固定費が600万円かかるとして、月換算では、50万円かかることになります。年間診療日数が仮に200日の場合、一日当たりの固定費の負担は3万円です。ここまで考えると、一日3万円売り上げてやっとそこから収益が出るという計算や、患者さんの一人当たりの単価が例えば5000円とすると、一日6人患者さんが来院してくれれば、回収できるという計算が成り立ちます。
また一日の売上の平均が8万円と仮定すると、一ヶ月に6日間働けばほぼ固定費は賄えるという計算が成り立ちます。その場合は、一日16人の患者さんを診察する必要があるなどと、色々な計算や戦略にも数字が応用できます。結構便利です。
スプレッドシートは他にも応用が効く
スプレッドシートは固定費の把握に留めるのは勿体ないです。私は一日の収益、コスト、粗利、利益率、抗原キットの使用数から、抗原キットの在庫までリアルタイムで把握できるように、スプレッドシートを編集して毎日クリニックの経営状況を把握するようにしています。これについてはまた別記事で掘り下げようと思います。
固定費は結構変わる
運用してみると固定費は結構かわります。最近は色々なものが値上げ傾向なので、固定費が微増傾向でした。そこで私は、あまり使っていないものや、削減できる経費をみつけて、なるべく元の固定費を維持できるように努めています。
最近見直したのは通信費です。クリニック用で用意していた携帯電話回線を、更に格安のmvno回線に変更しました。元々はUQ mobileを使用していましたが、あまり使わない割にコストが気になっていました。そのため日本通信simというややマニアックですが、その界隈では有名な会社に変更しました。月額は実に290円!です。2900円ではありません。驚きの価格です。このように固定費を常に把握していると、知らず知らずのうちにコストが増えてしまうことにも目を光らせることができます。経営においては結構大事であると思います。
ここまで来ると、はっきり言ってセコいかもしれませんが、クリニックが生き残るためには、常日頃から不要な経費は削ることは本当に大事だと考えています。クリニックを開くと痛感しますが、1日に来院される患者さん1人を増やすのは本当に大変です。不要なコストをカットするほうが再現性も高く、よっぽどラクだと思います。そして平時こそコストカットに努め、余剰資金は高配当ETFに入れると、徐々に経営がラクになってきます。段階的ですが、配当金で、通信費が賄える、光熱費が賄えるようになるだけでもだいぶ違うと思います。ゆくゆくは、パートさんの給与を賄える、さらには家賃も賄える、、、となってくれば、もうそうそうなことでは潰れません。先生の生活費が配当金で賄えるようになれば、もう仕事はゴールです。もういつ仕事を辞めるのも自由になります。
しっかりとしたコスト意識をもって、盤石な経営に勤めれば、クリニック経営が経時的にラクになっていくと思います。わたくしは、まだまだ遠い道のりの途中にいます。一緒に頑張りましょう。