今回は開業医における、カルテ記載のポイントというテーマで考えて行こうと思います。開業するような、臨床経験がおありの先生に、いまさらカルテ記載のことなど、という感じですが、開業医ではカルテ記載が勤務医のときよりも厳密に求められるようになります。特に特定疾患療養管理料や生活習慣病管理料など、特に新規個別指導でも狙われやすいポイントについては、厳密に、誰がみても明らかなように書いておく必要があります。今回は管理料について、開業医特有のカルテ記載のポイントについてみていきます。
一般的なカルテ記載はこちらをご参照ください。(参考記事→カルテ記載のポイント 一般編

特定疾患療養管理料、生活習慣病管理料は特に注意

特定疾患療養管理料、生活習慣病管理料は内科系の診療所では特に重要な項目になります。後で誰がみても明らかなように記載する必要があります。そのため、これらの項目は、通常のSOAPの内部に書くのではなく、独立させて記載する方法がよいと思います。

以下、気管支喘息のカルテで、具体的な例をお示ししようと思います。

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〈特定疾患療養指導管理料〉
・算定する病名 気管支喘息
・食事指導内容 ピーナッツアレルギーのため、ピーナッツの摂取は避けること。バランスの良い食事をして下さい。
・運動指導内容  喘息発作時は、運動を避けること。それ以外には、特に運動制限はありません。
・服薬指導内容  ステロイドの吸入薬を忘れずに必ず使用すること。頓用のメプチンのみ使用するのは極めて危険なため、必ずベースのレルベア200を一日一回使用するように説明をした。
・今後の治療方針  
経過をみて、レルベア100に、減量を考慮していく。
指導記載日付:2024年◯月◯日(◯曜日)
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上記のように、特定疾患療養指導管理料にかかわる項目は、////////////////////////で前後を囲み、誰が、後でどうみてもわかるようにするほうが良いです。算定する病名によって、重点的に指導する内容は異なりますが、喘息の場合は、吸入薬の使用方法が特に重要だと思います。喘息でも特に食事に対して制限や注意点がない場合は、「バランスの良い食事を」、などで濁すことも現実的だと思います。

以上の内容は、特定疾患療養指導管理料を記載する度に、記載が必要な内容です。当然患者さんへの指導も必要になります。患者説明+カルテ記載で初めて算定可能な点数になるためです。

安定している場合など、どうしても毎回の指導内容、カルテ記載が似通ってしまうのは、やむを得ません。コピー&ペーストで完全に同じ内容が毎回続くのはさすがにマズいですが、全く違う内容で、毎回コロコロ変えるのは、それはそれで不自然のような気もします。

コピペにならないようにするためのポイント。

指導記載日付を敢えて記載したのは、電子カルテだと、どうしてもコピペになりがちのため、少しでも記載を変えることを忘れないようにするためです。毎回日付を変えるというひと手間があれば、その時にわずかでも、指導内容の記載を付け足したり、変えたりすることができます。数年通っている患者さんで、ある程度内容が似通ってくることは、もうどうしようもないと思いますが、完全なコピペが何度も続けば、新規個別指導や、何らかの査察が入ったときに指摘されると思います。逆に少しでも毎回内容を変えていれば、まず問題ないでしょう。

また季節のネタを入れるのも、内容を変えるコツです。たとえば夏は運動療法の項目に、「熱中症に注意すること」と追加したり、年末の受診であれば、食事指導内容に「年末年始に食生活が乱れやすいので注意」と記載を追加することです。私は時事ネタや、患者さんの会話で話題になったことなどを少しでも組み込んで、内容が同じにならないように、工夫をしています。

テンプレートを作っておく

特定疾患療養管理や生活習慣病管理料の内容を、その都度考えるのは面倒で効率的ではありません。そのため、ある程度の内容を多めに盛り込んだテンプレートを作成しておき、テンプレートを患者さんの状況に応じて修正する方がよいと思います。

たとえば、生活習慣病管理料で糖尿病の具体例をお示します。

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生活習慣病 療養計画書 初回用 
計画書作成日:2024年〇月〇日
患者様氏名:〇〇〇〇 様
生年月日:1970年01月01日
主病:糖尿病
【目標】
HbA1c 6.5 % 以下
現状のHbA1cの値は概ね良好と考えます。
食事療法、運動療法、薬物療法を組み合わせ、引き続き上記の目標に向けて治療を行っていきます。
【食事療法】
食事摂取量を適正にしてください。
炭水化物を多く含む、お米、麺類などの主食は控えめにしてください。主食の大盛りは禁止です。
白砂糖を含むお菓子は控えめにしてください。甘いものを摂取したい場合は、ラカントなど血糖値に影響を与えない甘味料を使用しているものにしてください。
ジュースなどの糖質を多く含む飲料は控えめにしてください。ジュースを水分補給の代わりに飲むのは禁止です。
アルコールは多くても一日一合を目安にし、休肝日を設けるようにしてください。
【運動療法】
一日30分ほどのウォーキングを可能なら毎日行ってください。それに相当する運動でも大丈夫です。
【その他】
引き続き内服継続をお願いします。内服が切れる前に余裕を持って受診してください。
体調に変化がある際は、残薬がある場合でも早めに受診してください。
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このようなテンプレートを作成しておき、患者さんの状況によって、食事療法の一部を削ったり、スポーツクラブに通っている患者さんは、その旨を運動療法の項目に入れたりと、適宜アレンジしていきます。これであれば、数分で作成可能で、なおかつ他の患者さんとも内容が被らないように、配慮することもできます。

ちなみに電子カルテにテンプレートを組み込んでおくと、作成日、患者さんの名前も自動入力してくれます。

まったく同じ内容の指導を、すべての患者さんに行っている場合は、査定されるリスクがある

テンプレートを使用するのは全く問題ないと思いますが、すべての患者さんに、全く同じ内容で指導していた場合、それは査定される可能性が高いです。食事指導の内容で、塩分や糖質を制限する旨の内容などは、重複しても問題ないと思いますが、氏名だけ替えて、まったく同じ内容の計画書を渡すのは、流石にマズイです。新規個別指導ではかならず指摘されます。  

食事療法の文言はストックしておく

食事療法の文言は私は高血圧症、脂質異常症、糖尿病に分けてストックしています。これらを患者さんに応じて、ランダムに使い分けることで、内容の重複を避けるようにしています。

具体的には以下のようになります。

高血圧症

> 食事摂取量を適正にしてください。
> 食塩、調味料の使いすぎに注意してください。
> 味噌汁、スープは一日一杯までに留めてください。ラーメン等のスープは残すようにしてください。
> ハム、かまぼこ等の加工品、漬物を摂取しすぎないようにしてください。
> 外食時は特に塩分が多くなりすぎないように注意してください。
> 香辛料を上手に利用して、減塩につとめて下さい。
> 野菜をしっかりと摂取してください。

脂質異常症

> 食事摂取量を適正にしてください。
> 飽和脂肪酸(肉の脂身が多い部位)、コレステロール(卵やレバーなどの内臓)を多く含む食品を控えめにしてください。
> 豆腐、納豆などの大豆製品を積極的に摂取してください。
> 野菜、海藻類、きのこなどの食物繊維を積極的に摂取してください。
> マヨネーズ、ドレッシング、ソース等調味料の使いすぎに注意してください。

糖尿病

> 食事摂取量を適正にしてください。
> 炭水化物を多く含む、お米、麺類などの主食は控えめにしてください。大盛りは禁止です。
> 白砂糖を含むお菓子は控えめにしてください。甘いものを摂取したい場合は、ラカントなど血糖値に影響を与えない甘味料を使用しているものにしてください。
> ジュースなどの糖質を多く含む飲料は控えめにしてください。ジュースを水分補給代わりに飲むのは禁止です。
> アルコールは多くても一日一合を目安にし、休肝日を設けるようにしてください
> 外食時は特に炭水化物が多くなりすぎないように注意してください。

上記を選んでアレンジ

このような内容をあらかじめ用意しておいて、患者さんに応じて、2-3個ほど文言を選んで、計画書に記載して説明、お渡しするようにしています。この文言は栄養指導のサイトなどからヒントを得て、適宜追加、アレンジしています。さすがに毎回同じことを言っていると、私も飽きてくるので、少しずつ変えています。

上記の内容は自由にご利用いただいて問題ありません。

発熱患者等対応加算について

管理料とは少しずれますが、2024年に新設された、発熱患者等対応加算についても、当院でのカルテ記載についてお示しします。

医科診療報酬点数表に関する事項によると、発熱患者等対応加算を算定する条件は以下のようになっています。

発熱患者等対応加算 「注 11」ただし書に規定する発熱患者等対応加算は、 (25)の外来感染対策向上加算を算 定している場合であって、 発熱、 呼吸器症状、 発しん、 消化器症状又は神経症状その他感 染症を疑わせるような症状を有する患者に空間的・時間的分離を含む適切な感染対策の下 で診療を行った場合に算定する。

これに対応するために、私はこちらを算定する場合は、以下のようにカルテ記載をしています。

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【発熱患者等対応加算】
発熱、感冒症状を有する患者として、通常外来とは動線が異なる、発熱外来の診察室に案内し、診察、検査を実施した。
サージカルガウン、サージカルマスク、フェイスシールド、ニトリルグローブを着用し、患者と医療者の間にアクリル板を設置して診察をおこなった。
発熱、その他感染症を疑わせるような症状を呈する患者に対して、上記のような、適切な感染防止対策を講じた上で診療を行った。
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算定のためのカルテなので、後で問題が出ないように、あえてくどめに書いています。発熱患者等対応加算については、カルテ記載については、必須ではないようですが、念の為記載をしています。

まとめ

この他にも管理料等はいくつもありますが、基本的には同様に、カルテ内で管理料ごとに分けて、誰がみても明らかなように、記載をしておくほうがよいと思います。もし心配な先生は、各県の保険医協会に質問すると、注意するべき項目や、カルテ記載のポイントについて詳しく教えてくれます。保険医協会は入会が必要ですが、こちらについては、開業医の先生であれば、入る価値が高いと思います。