2025年現在、労働市場は売り手市場であり、多くの企業が人材確保に苦労しています。人件費が高騰し、経営を圧迫すると同時に、給与を上げても人材を確保することが難しくなっている状況です。クリニックも同様にスタッフに選ばれること、また定着してもらうことは難しいと聞きます。
今回はスタッフ定着という面で、私が心がけていることをご紹介してみようと思います。超小規模クリニックなのであまり汎用性がない内容ですが、少しでもご参考になれば幸いです。
スタッフが居心地よく働いて、定着してもらうための工夫
怒らない
まずは、何があっても感情的に怒らないということです。多少仕事に抜けがあっても許容する精神が大切かと考えています。職場が嫌な場所にならないようにすることが、スタッフ定着の一番のポイントかと思います。
そもそもミスをして怒ると、次にミスが起きたときに申告してくれなくなる可能性が高いので、それはクリニックの経営や安全管理の観点からも問題です。自分がミスをすることもあるので、人がミスをしたり、忘れたりしても私は決して怒らないように気をつけています。
もちろん必要なことは、指摘するケースもありますが、それも注意ではなく、お願いという形で、嫌な感情を起こさないように細心の注意を払っています。
感謝を示す
通常の業務でも、やって貰っていることについては感謝を言葉で示すように心がけています。細かいことでも、クセのようにお礼を述べるようにしています。
私がマズイと思うのは、給与を払っているのだからこれくらいは当たり前、という態度をとってしまうことです。たしかにスタッフさんに給与をお支払いしているのは先生ですし、雇用契約に基づいて金銭と対価に労働力を提供してもらうことは、社会的にみれば当たり前かもしれません。先生に思うところがあるのは十分承知です。それでも言葉一つでスタッフが気持ちよく働いてくれのであれば、悪くない投資ではないでしょうか。
人間関係の配慮
私のクリニックは特殊で一般化できませんが、スタッフは私と2人体制なので、スタッフ同士で揉めるということはありません。しかし多くのクリニックでは、スタッフの人間関係は悩みの種になるようです。本当に大変だと思います。
空き時間は自由
患者さんが途切れたときなど、空き時間は受付でできる範囲のことは自由にしてもらっています。スマートフォンや読書など好きに過ごしてもらっています。空き時間ができれば、他に仕事を振るという考え方もありますが、私は決められた業務以外は、時間が空いた場合も特にお願いすることはありません。受付でお店番をしてくれればOKというスタイルです。
スマホについては色々な考え方があると思います。クリニックによっては勤務時間内はスマホ操作を禁止としているところも多いようです。たしかに職員がスマホを勤務時間内に操作することを許容すると、収集がつかなくなるケースも想定されます。場合によっては禁止とせざると得ない場合もあると思います。
予約がなければ早く返す
最後の方の枠で予約が入っていない場合や、最後の一枠のみの予約で他が割と空いている場合は、定時より前でも早めに終了し、帰宅してもらっています。仕事がないのにダラダラ居てもらっても仕方ないので、予約がなければ、定時の30分前で終了してしまいます。これも他の職員の目がないからできる、裏技に近いものかもしれません。(もちろん給与は居てもらった時と同様に支給します)
いつ休んでも良いと
体調が悪いときは、いつでも休んで良いとしています。急な体調不良は誰にでも起こり得ることです。何がなんでも休めないと思うとプレッシャーがありますが、体調が悪いときは休めると思えば、そのように気負う必要はありません。そのためのバックアップ体制の構築は私の仕事です。
出勤はシフトで完全自由
出勤は前月に予定をシフトで出してもらっていますが、出勤については完全に自由にしています。スタッフさんがでられない日は、家族にバックアップしてもらって運営しています。シフトが自由に組めると、予定も立てやすいです。結果的に続けやすい職場になると思います。しかしこれも当院にスタッフが1名しかいないため、自由にできるという側面も大きく、一般化は難しいかもしれません。
有給休暇は100%取得
有給休暇については、わかりやすく書面で明示してお渡ししています。そして2年間の有効期限の前に使うようにお願いしています。経営者の立場からすると本音では、有給休暇は使ってほしくないというケースもあると思います。またスタッフが多い職場では、実務上、全て取得してもらうのは難しいケースもあるのは承知しています。
しかし敢えてこちらに不利な情報も積極的に開示することは、スタッフの信頼を得られる可能性があります。
無駄話をしない
これは良いのかどうか分かりませんが、世間話やプライベートの話などは一切していません。実は意図的に心がけているわけでもなく、私は元々あまり喋らないキャラなので、仕事以外の内容で話をすることはまずないです。職場で楽しくおしゃべりしたい人には向かない職場になってしまいますが、私のように放っておいてほしい人には合っていると思います。私も時間が空いたときは、診察室で他の仕事に集中できるので、非常にラクです。
働きやすさを売りに
待遇を上げようとしても、当院のようなミニマム開業では限界があります。社会保険の加入条件も満たないような規模で、また給与を上げようにも資金的に限界がありますから、他のことで勝負するしかありません。
色々と考えた結果、上記のように、給与以外のメリットを色々とひねり出しました。自分の経験や、いままで勤めていた病院の労働環境を良く考えてみると、給与が高い職場でも、労働環境が良いとは限りません。時間外労働がサービス残業になっていたり、有給休暇もロクに取得できていないなど、労働者としての権利が厳密に守られていない職場が多い(というかほとんど)ということに気が付きました。
そこで労働者としての働き方を守ることを徹底すれば、それだけで他の職場と差別化出来ると考えました。まだまだ労働者としての働き方を守っている職場は少ないです。特に医療関係はザルと言っても良い状況です。所定労働時間を過ぎて、1分単位で残業代を支払う職場がどこにあるでしょうか?私は今まで見たことがありません。
当院ではご紹介したように、労働時間は守る(むしろ早めに終了)、有給休暇は完全取得していただく、契約外の仕事は依頼しない等のことを守るように勤めています。私も労働法を熟知しているわけではないので、抜けはあると思いますが、可能な限り労働者に寄り添った職場となるように勤めています。